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タグ「クラブライセンス制度」の一覧

2013年度のJクラブの決算が出揃い、Jリーグの公式サイトにも資料がアップされた(一番下のJクラブ個別経営情報開示資料)。

クラブ経営に関してはこれまでも何度かエントリーをあげてきており、今回も新しい情報をもとに経営的に危ないクラブを取り上げていく。

参考エントリー

クラブライセンス制度のおさらい

Jリーグはクラブの経営基盤の強化と安定化のためにクラブライセンス制度を運用しており、基準に抵触するとJクラブライセンスが交付されないなどのペナルティが待っている。

基準は競技に関するものなど5種類にわかれており、その中に財務基準というものがある。

財務基準をクリアするための要件は以下の2点に集約される。

  • 2012年度以降、3期連続で当期純損失(赤字)を計上していないこと
  • 2014年度以降、債務超過に陥らないこと

今般公開された2013年度の決算は当期純損失(赤字)についてチェックする2期目であり、2012年度、2013年度に連続で赤字計上しているクラブはライセンス剥奪のリーチがかかったといえる。

当エントリーでは上記2点の要件に照らしあわせて、基準に抵触しそうな危ないクラブ(J3除く)の決算をまとめて紹介したい。

当期純損失(赤字)計上クラブ

まずは財務基準要件の1つ目、当期純損失について。下の表を見てもらいたい。

2013年度純損失クラブ一覧.jpg

この表は、2013年度の決算で純損失を計上したクラブについて、赤字額の多い順に並べたものである。

J1とJ2の全40クラブのうち、赤字計上は11クラブ。表内の赤いセルは2012年度に続いて2期連続で赤字のクラブを示している。これらのクラブは2014年度、つまり現在進行中のシーズンにおいて赤字を計上するとJクラブライセンス剥奪などのペナルティが待っている。具体的なクラブは、神戸、福岡、名古屋、栃木、群馬、湘南である。

表内の黄色いセルは、2012年度は黒字だったが2013年度に赤字になったクラブ。鳥栖、東京V、G大阪、清水、長崎がここに分類される(長崎は2013年度に新加盟なのでデータなし)。

数値を見ただけで、神戸の赤字額が抜きん出いることが分かる。また、神戸に関しては後述する債務超過額に関しても群を抜いている問題クラブである。

鳥栖も若干気になるところだろう。鳥栖は2012年度に比べて収益が2.5億円増加したが、費用が約7億円増加しており大幅な赤字に陥った。特に人件費が6億円から10億円に1.5倍以上増加しており、チーム成績の向上が経営的には逼迫要因になり得ることが如実に現れた結果となっている。

その他は赤字額が目立つクラブはないが、J2の金欠クラブは1000万円集めるのにも苦労している状態である。実態としてかなり苦しい経営を迫られているクラブもいくつか存在しており、なんとか黒字回復を祈るばかりである。

債務超過クラブ

次に要件の2つ目、債務超過について。債務超過についても表にまとめたのでご覧あれ。

2013年度債務超過クラブ一覧.jpg

債務超過も11クラブ。赤いセルは1つ名の要件である赤字計上とのダブルで抵触しているクラブ、黄色いセルは赤字ではなかったがこれまでの累積によって債務超過のクラブである。

これらを踏まえていくつかのクラブについて個別に状況を詳述する。

神戸 〜 額だけ見れば大問題だが・・

さて、まずは神戸から見てみよう。神戸は2期連続で赤字を計上したばかりでなく、累積損失が16億円を超えている。クラブライセンスを剥奪されないためには、来期は16億円超の黒字を計上することがマストである。普通に考えて、ムリ。いくら今年度からJ1にあがったとはいえ、昨年度3.7億円の赤字クラブが今年度16億円の黒字になるわけがない。どこのクラブも自力では1億円の黒字すら出すことが難しいのJリーグである。途方にくれるしかない・・わけなのだが、個人的には神戸は16億円の黒字に持ってくると考えている。その理由は、次に説明する債務超過額2位の横浜FMのケースで取り上げる。

横浜FM 〜 自力再建は断念し、スポンサーの力で回復へ

これまで継続してJクラブの決算を見てきた人であれば、2013年度の横浜FMの優良決算に目を見張ったことだろう。2012年度は16.7億円あった債務超過が2013年度は6.7億円と10億円も改善されているからである。このペースであれば2014年度に残りの6.7億円の債務超過を改善することはたやすい。なぜ横浜FMはここまでの劇的な回復を遂げることができたのか。

答えは簡単で、日産が通常のスポンサー費に加え、追加で10億円出したからである。正確に言えば、日産がマンチェスター・シティ(マンC)と業務提携し、マンCにスポンサードしたお金の一部をマンCが横浜FMに出資する形を取っている(詳しくはFマリノスから「NISSAN」ロゴが消える日 | 東洋経済ONLINEを参照)。これにより日産はマンCを通じて欧州への広告効果を狙えるし、マンCはアジアでのファン層拡大のための足がかりとすることができる。

もちろん、横浜FMも2012年度までは単体で赤字計上していたのが、2013年度はイーブンにまで回復している。プライマリーバランスが回復しているということは、経営状態がすこぶる悪いわけでもないだろう。この点に関しては嘉悦社長の努力の成果といえる。

ただ、結局10億円レベルの債務超過を自助努力のみで回復するのはほぼ不可能で、大規模なスポンサーに頼らざるを得ないのは間違いない。神戸が大丈夫と先述したのも、楽天という大スポンサーがバックについているからに他ならない。もちろん楽天もお金をドブに捨てることはしないだろうから総合的に楽天の発展に寄与する方法を取ってくるだろうが、16億円くらいは楽天にとって出すことは難しくないと想像できる。

大分、鳥栖、岐阜 〜 それぞれ事情は異なるが問題はない

次に債務超過が多いのは大分、鳥栖、岐阜の順だが、おそらくこれらのクラブは問題なく基準をクリアするだろうと思われる。

大分は過去に自力再建不可能に陥り、Jリーグから支援を受けた過去がある。当時の特別扱いを問題視するきらいもあるが、そのときに十分すぎるほど痛い目を見ており、2013年度は2億円超の黒字を計上するなど安定した経営に向けて努力を続けている。2014シーズンはJ2に降格したため収入面で不安もあるが、帳尻はあわせてくるだろう。

鳥栖も同様、2013年度に大幅な赤字を計上して債務超過に陥ったが、もともと赤字体質のクラブではないため心配はしていない。リーグ成績向上によりチーム力維持のために人件費は増したが、今シーズンも継続して上位をキープしているという事実は今後は追い風にもなるはずである。

岐阜は、Jトラストの藤澤信義氏からの資金援助があるのでまったく問題がない羨ましいクラブである。

栃木、群馬、熊本 〜 実は深刻なのはこれらのクラブ

以降は債務超過額で言えば6000万円程度以下のクラブであり額自体は大きくない。しかしそれはクラブ規模が大きくないから債務超過額も大きくならないだけで、実際にはかなり苦しいクラブばかりである。

栃木、群馬、熊本などは最後の頼みの綱として地元での募金活動を実施したりしている。募金だけで何千万円も集まることはないだろうが、募金人数や額を頼りに「地元から愛されているし必要とされている」という姿勢を示し、地元の企業からお金を引き出すのが目的だろう。仮に2014年度は乗り切ったとしても以降も毎年継続して苦しみが続く。何が何でもJ1に昇格というクラブではない(栃木はそのプロジェクトを一旦あきらめている)ので、今後の生きる道を探らなくてはならないだろう。

福岡も2013年末に5000万円ほど現金が足りないと騒ぎになったりともがき苦しんでいる。そのときは明太子のふくやの支援などもあって乗り切ったが、結局2013年度は赤字計上しており債務超過に陥ってしまった。2800万円と額は多くないが、果たして乗りきれるか。

札幌、北九州 〜 安心はできないが2014年度は乗り切るだろう

札幌は札幌ドームの使用料が高いことが経営の逼迫要因。ただ札幌は経営努力もすばらしい。既に退団となったがレ・コン・ビンを獲得して東南アジアに活路を見出したり、今シーズンは小野伸二を獲得して平日開催のホームゲームで13000人ほど集客したりと、追い詰められているわけでもなさそうだ。

北九州に関しては2013年度は黒字計上しており、1100万円程度の債務超過はなんとかなるだろう。

クラブライセンス制度は何をもたらすか

さて、最後にまとめを。

クラブライセンス制度の導入が決まった当初は横浜FMや神戸、名古屋あたりが危ないと思っていたが、大きなクラブは大きな後ろ盾があり、結局は何とかなってしまう。あおりを食らうには地域の小さなクラブであることが明らかになってきている。

このグラフは2013年度の40クラブの決算について横軸に売上額を、縦軸に当期純利益(損失)額をプロットしたものである(単位:百万円)。

2013年度決算プロット.jpg

特殊な事情の横浜FMを除けば、どこのクラブも売上額こそ差はあれ、利益は似たり寄ったりなのがJリーグなのである。そして財務基準で四苦八苦しているのは売上額の少ないごちゃっとしたグループに属しているクラブということである。

しかし、個人的にはこうやって基準を作ってある程度追い込むのは悪いことではないと思っている。もちろん基準はライセンスを剥奪することや締め付けることが目的ではなく、健全経営のための指針となるべきである。そこは誤ってはならない。

一方で、資金難に陥って地元で募金などをしてみると、やはり地元に愛される以外に生きる道はないということに嫌でも気付かされる。これにいち早く気付いたクラブは、Jリーグ百年構想に立ち返って総合スポーツクラブとして地域に根ざして生き残る道を模索し、ある種の成功を収めているクラブもある。川崎F、湘南、C大阪、札幌、新潟、松本などが良い例だろう。

Jリーグ自体まだ21年目であるし、本当の意味で地域に根ざしてクラブが経営の方針を変え始めてまだ数年。根ざすのはこれからである。一時的には苦しみもある財務基準であるが、将来的な健全なリーグの発展のために必要な改変であるはずだ。願わくば、どのクラブもJクラブライセンスが剥奪されることがありませんように。



tags Jリーグ, クラブライセンス制度, 財務基準

いよいよ2014シーズンのJリーグが開幕する。ワールドカップイヤー、久々の超大物フォルラン効果などもあり、サッカークラスターの周辺では一定の盛り上がりを見せている。

さて、2014シーズンといえばいよいよクラブライセンス制度の財務基準による実効支配が始まる年度となる。財務基準をクリアする要点は以下の2点に集約される。

  • 2012年度以降、3期連続で当期純損失(赤字)を計上していないこと
  • 2014年度以降、債務超過に陥らないこと

これを守れないクラブはJリーグクラブライセンスを剥奪される。すなわち、J3やJFLなどへの降格である。

Jリーグは全クラブに決算書の提出を義務付けており、サイトで公開されている(一番下のJクラブ個別経営情報開示資料)。

2013年度の決算は2014年の8月ころに全クラブ分が出揃うので、現時点ではクラブライセンス制度に影響のある年度としては2012年度のものしか存在しない。しかし、2012年度の資料を見るだけでも十分に「危ないクラブ」が見えてくる。そこで本エントリーでは財務基準の2要件に照らし合わせ、「危ないクラブ」とその危険レベルについてまとめておく。

2012年度赤字計上クラブ

まずは要件の1つ目、赤字についてである。2012年度(平成24年度)Jクラブ個別情報開示資料をもとに、赤字を計上したクラブについて赤字額が多い順に並べた表を作成した。

2012年度純損失クラブ一覧.jpg

細かい数値は一切省き、営業収益、営業費用、営業利益、当期純利益(損失)の4項目のみで構成してある。営業利益から特別利益/損失(不動産の売買や役員の退職金など)や税金を加えたものが当期純利益(損失)であり、財務基準で確認されるのはこの当期純利益(損失)がマイナスであるかどうかである(表内黄色セルで作成)。

また、クラブライセンス制度に直接影響はしないものの、前年度である2011年度における純利益(損失)についても掲載してある。

各クラブについてのコメントは後述する。

2012年度債務超過クラブ

次に要件の2つ目、債務超過についてである。債務超過とは、負債の額が資産の額を上回った状態を指し、つまりは保有している資産をすべて売却したとしても負債を解消できないということである。

これについても2012年度(平成24年度)Jクラブ個別情報開示資料をもとに債務超過クラブについて債務の額が多い順に並べた表を作成した。

2012年度債務超過クラブ一覧.jpg

赤いセルのクラブは2012年度決算が赤字且つ債務超過に陥っているクラブであり、財務基準要件を2つともクリアしていない、いわば「警告」クラブである。

この7つの「警告」クラブに加え、2012年度赤字額が膨らんでいる名古屋、福岡を加えたクラブについて個別に状況を確認してみたい。

札幌 危険レベル3 〜 野々村社長の仕掛けが芽を出すか

試合関連経費であるスタジアム使用料が札幌を苦しめている。札幌の試合関連経費は2億5000万円であり、J2クラブ(札幌は2012年度はJ1だったが)の平均は8000万円であることを考えるとやはり高額である。登別が300万円、札幌ドームが800万円という話もあり、これではクラブ経営は苦しくなるだろう。

2013年3月に野々村芳和氏が社長に就任し、いろいろと仕掛けているので期待がないわけではない。

ベトナムの英雄と呼ばれるレ・コン・ビン獲得、それに伴う住友商事メディア事業本部とのスポンサー締結など光も見えた(レ・コン・ビンは退団済み)。このような仕掛けが他にも芽を出せば、3700万円の債務超過の返済の目処も立つと思われる。負債額もそこまで大額ではないので、最後はどうにかして帳尻をあわせてくるだろう。

栃木 危険レベル5 〜 小さな積み重ねでカバーできるか

財務を発表している2007年度から6シーズンで1シーズンしか黒字計上していない。財務を見ても決定的に悪いところがあるというよりは全体的におしなべて良くないといった印象。ただ、だからこそ改善が難しいとも言える。

債務超過額こそ5600万円だが、2012年度の純損失が1億円を超えており、このままでは危ないだろう。2013シーズン途中にこれまで築き上げてきた松田浩監督のセオリー通りの4-4-2から、引いて守ってカウンターを仕掛けるサッカーへと「戦略的撤退」も余儀なくされている。シーズンオフにはパウリーニョら主力も放出した。J1を目指す路線から人件費を抑え、現実を鑑みたクラブ経営に舵を切っているので、この路線でどこまで支出が抑えられるかがポイントになる。

過去に協賛企業への出資のお願いをして資金を引き出しことがあるので、再度そのやり方を使うのは難しい。栃木の選手やスタッフも参加する街での募金活動など小さな活動も始めており、これらの積み重ねでどこまでカバーできるかがポイントになるだろう。

熊本 危険レベル6 〜 資本の注入がないと難しい

熊本も栃木と同じく決定的に悪いところがあるというよりは全体的に足りていないという難しい状況である。年間予算が6億円くらいのクラブが7000万円と10%を超える債務超過を抱えており、数年でリカバリーするのは難しいと言わざるをえない。

2013年度の決算でどこまで債務超過を回復できているのかにもよるが、額によっては大口スポンサーを取り付けないとかなり厳しい状況である。

群馬 危険レベル7 〜 新社長の手腕に期待

2月26日に役員を刷新し、都丸晃(とまるあきら)新社長が発表された。新社長のミッションはクラブの強化もあるだろうが、何よりもまずは財務体質の改善である。都丸社長は記者会見でコストの削減やスポンサーの発掘など改善策を打ち出したが、どれも具体策には欠けておりパンチ力はない。

また、もともとのホームタウンであった草津市からは出資を受けているものの、ホームスタジアムがある前橋市やクラブ名にも冠されている群馬県からは出資が得られていない。

もちろん小さな努力も必要だが、8700万円の負債はそういうレベルでどうにかなるものではない。県や市、民間企業から出資を受けることができるか、そのためにクラブがどのように変わっていくのか、新社長の手腕が問われる。

岐阜 危険レベル0 〜Jトラストの支援による復活

2012年時点では債務超過額がJ2クラブとしては絶望的な額である約2億円にまで膨れ上がり、破綻にもっとも近い存在と言われていた。ところが2013年、Jトラスト株式会社代表取締役社長の藤澤信義氏から企業、個人として出資が発表された。社長個人としてもまず1億5000万円という資金が用意され、今後も無制限に支援していく方針であるという。

これにより監督にラモス瑠偉氏を招聘することに成功し、メディアに露出する機会も増えている。

岐阜はJトラスト、そして藤澤社長に完全に命運を握られているということにはなるが、まずは財務に関して心配することはないだろう。

福岡 危険レベル5 〜 ふくやの心意気を無駄にしてはいけない

2012年時点では債務超過ではなかったが、2013年末にキャッシュフローが足らずこのままでは選手やスタッフへの給与の振込が遅延するという衝撃的なニュースが発表された。時期的にもはや遅延もやむ無し、下手をすればこのまま破綻かとも思われたが、明太子のふくやによる粋な支援のおかげもあり、一時的にはキャッシュは回復したようである。

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筆者が購入したふくやのアビスパ支援明太子セット

しかし、抜本的な改善がなされたわけではない。

福岡は支出の半分が人件費である。収入額はJ2平均より低いのに人件費はJ2平均より高いという事実を受け止め、まずは人件費の削減が求められる。

2013年度の決算を見てみなければ分からないが、2012年度までは債務超過ではなかったので途方もない額の債務があるわけではないだろう。地道に改善すればどうにもならないわけではないと思われる。

名古屋 危険レベル3 〜 人件費の削減と最後のトヨタ頼み

福岡と同様、2012年時点では債務超過ではなかったが2012年度の赤字額が約3億円と巨額なので危ない。営業費用は浦和に続いてJクラブ第2位である。特に人件費が20億円でこれはJクラブトップである。

闘莉王、楢崎、玉田、ケネディなどの高年俸選手を依然として抱えているものの、2013シーズン終了後に増川、阿部、田中隼磨など主力級の選手を放出した。

またバックには天下のトヨタ自動車がついており、もちろんいつまでもスポンサーに頼り続けるわけにはいかないが、当面は足りない分は補填してもらえるだろう。赤字額は大きいが、危険レベルは低いと思われる。

神戸 危険レベル2 〜 J1特需の期待と楽天の支援

神戸は2012年度は3億円の赤字と膨らんでいるように見えるが、実はこれでも年々赤字額が減ってきている。とはいえ毎年度赤字なので累計がかさみ、債務超過が12億円となっている。

しかしあまり悲壮感が漂わないのは、楽天が補填してくれるという安心感があるからだろう。2014シーズンでJ1にあがることで、おそらく単年度決算は黒字にできると考えている。単年度で黒字であればプライマリーバランスとしてはOKなので、クラブライセンス制度をクリアするために楽天は一時的に債務超過を解消するだけの資金援助を間違いなくすることだろう。

他のクラブから考えればうらやましい限りである。

横浜FM 危険レベル9 〜 日産と清濁併せ呑んだ交渉が必要

横浜Fマリノスは日産の追加支援があっても債務超過を解消できると思えないにも書いたように、マリノスは危機的な状況である。

嘉悦社長の取り組み努力は分かるが、2011年度の赤字額5億8000万円、2012年度の赤字額6億3000万円で債務超過額が16億7000万円とどれも群を抜いている。ただでさえ日産から10億円規模の巨額の支援を受けているのだが、帳尻をあわせるためにはおそらく2014年度に25億円程度の支援が必要になる。

日産はかつて経営不振に陥った際にルノーに助けれた経緯があるが、今度はルノーが経営不振に陥っている。当然、昔助けたのだから今度は助けてくれよということになるだろう。そういった状況で、マリノスに25億円もの額を出資することができるのか。相当厳しい交渉が待ち構えていることが間違いない。

まとめ

J1クラブで危ない名古屋、神戸、横浜FMは負債の額もでかいがやはり後ろ盾があるのは心強い。厳しいのは群馬、熊本、福岡のようなクラブということに結局なってしまう。こういったクラブにウルトラCはないので、Jリーグ100年構想に立ち返っていかに地元からの理解を得られるか、この地道な努力の積み重ねしかないだろう。

C大阪、川崎F、湘南などのように、クラブ経営において「強化」と「事業」を分離し、いかに地元に密着したクラブを作っていくのかという理念や経営手腕が問われている。川崎Fのプロモーション部部長である天野春果氏による『僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』(筆者のレビュー)では事業の強化についてのヒントが散りばめられていて参考になる。


願わくば、2014シーズン終了後に全てのクラブがクラブライセンス制度を乗り越えていますように。



tags クラブライセンス制度, 債務超過, 横浜Fマリノス

今回は冷静に数値を見つめた話。

以前もブログで取り上げた横浜Fマリノスの債務超過の件。復習すると、2012年度は5億円の営業赤字で、累積の債務超過は約17億円。これがなぜまずいかというと、クラブライセンス制度の財務基準に抵触するから。

  • 3期連続純損失を計上していないこと(12-14年度から算定)
  • 債務超過でないこと(14年度から算定)

クラブライセンス制度に抵触すると、Jクラブライセンスが供与されない、つまりJ3あるいはJFLに落ちるということである(J3はAFC準拠ではない基準を作成しようとしているので、Jクラブライセンスとは別扱いになる公算が高い)。

今のところまだ2012年度の決算までの状況なので、あと2事業年度残っている。だからまだアウトではない。だけど僕は限りなくアウトだと思っている。

もう一度決算を見つめてみよう

まずは現実を知らなければ対策もできない。比較のために、浦和レッズと横浜Fマリノスの2012年度決算を並べてみた。

浦和とマリノスの2012年度決算比較.jpg

項目に多寡が存在するのは、浦和レッズは公式サイトで2012年度営業概況として細かい数値を公開しているから。横浜Fマリノスも公式サイトで2012年度決算についてを発表しているが、浦和レッズほど細かくはない。情報を公開していないということは、何かやましいことがあるからと勘ぐってしまうのが心情だ。最終的にサポーターにも協力を仰いだり納得してもらうことが必要かもしれないので、積極的な情報公開をすべきと、第三者として感じてしまう。

それはさておき、決算は数値なので単純に収入が支出を上回ることが何より重要である。どこかの数値を増やしたり減らしたりしなければならない。それを考えるために、いくつかの前提を抑えておきたい。

嘉悦社長の決意と現実的な着地点

横浜Fマリノスの嘉悦社長がどのような人物なのか知らないが、このインタビューを読む限り横浜Fマリノスのことを真摯に考えている経営者であると伺える。

ゴーンの懐刀が挑む、マリノス改革の全貌 | 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(上)
マリノスは、なぜ好調なのに"赤字"なのか | 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(下)

このインタビューの中で、以下のような発言がある。

これまで大企業を親会社に持つJリーグのクラブでは、たとえ赤字が出ても、親会社から宣伝広告費として追加出資してもらい、最終的に帳簿上はプラスマイナスゼロにすることが慣例になっていた(もちろんすべての経営者がそうではなく、犬飼基昭は浦和レッズの社長時代、三菱自動車からの赤字補填をストップした)。
だが、嘉悦は自前の経営を目指し、日産からの赤字補填を実質的にゼロへ。赤字が出ることを覚悟した、勇気ある決断だった。

つまりは、赤字が出ることを恐れずに親会社(日産)への依存体質からの脱却を図ろうと改革を進めているのである。

ところが、そこにクラブライセンス制度導入という黒船がやってきた。これは嘉悦社長にとっても誤算であったようだ。

クラブライセンス制度によって、急に赤字が許されなくなったのは、僕の最大の誤算です。それでも親会社からの補填なしで、ぎりぎりまで挑戦したい。こういう真意があるのに赤字だけ見て非難されるのは、アンフェアだと思います。デッドラインの2014年度末まで、あと1年半ある。最後はどこかで日産に頼まざるをえない瞬間が来るかもしれないですけれど、悪あがきを続けたい。

このインタビューが公開されたのが2013年5月23日。この時点ではまだ2012年度決算は発表されていないが、社長であれば当然耳には入っていただろう。その後、2013年7月9日に5億円の営業赤字と17億円の累積損失を発表。これに先立ち、2013年6月26日の朝日新聞の記事横浜F・マリノスが債務超過 社長「日産の支援必要」(会員ページ記事) で以下のように語っている。

では、ライセンス維持の条件となる「14年度に債務解消」はできるのか。「自主再建路線では難しい。着地点が破滅的にならないように日産側と話し合っている」。ただし、仮に経営が健全化しても、チームが弱体化すればサポーターは納得しない。「マリノスは優勝を争うチーム。一定レベルの強化費は不可欠で、そこは絶対に譲れない」とも約束した。

時間軸としてそんなに離れていない2つの記事で一方では「悪あがきを続けたい」、一方では「自主再建路線では難しい」と語っている。部外者からすれば二枚舌に聞こえてしまうのは否めないが、後者が本音であろう。

日産に頼るとは、具体的には広告料としてお金を出してもらうことを指す。ここで、横浜Fマリノスが日産に頼ってきた歴史を振り返っておく。

横浜Fマリノスは日産の支援で生き残ってきた

このブログが非常に分かりやすく横浜Fマリノスの収益構造や日産との関係についてまとめてある。上が2011年度について、下が2012年度について。
【考察】 マリノスの収益構造について: 横浜御用牙RSV 清義明のブログ
清義明のブログ Football is the weapon of the future REDUX 2030年のJリーグ未来予想 (1) -続【考察】マリノスの収益構造について-

このブログによると、過去2005年〜2007年には横浜Fマリノスの広告料収入が25億円を超えていたようだ。日産だけの広告料ではないので日産の支援額を精緻に捉えることはできないが、2012年度の広告料収入13億円と比較しても、現在は当時より10億円以上は日産の支援額が下がっていると考えて良いだろう。

その要因は、もちろん日産本体の費用対効果の結果でもあるだろうし、嘉悦社長(2010年に社長就任)の改革の影響もあるだろう。ただ紛れもない事実として、横浜Fマリノスは親会社の補填があって初めて収支をトントンにできる、高コスト体質のクラブであるということである。

現実問題として、債務超過は解消できるのか

横浜Fマリノスはマリノスタウンという素晴らしいクラブ施設を保有している。ただ、横浜の一等地の土地代が高いからクラブの収支をマリノスタウンが圧迫しているという話も聞く。先の決算でいえば、一般管理費に土地代や運営費を入れ込んでいるだろうから、おそらく実際にこれは高額であり、だからこそレッズのように細かい数値を出したくないのだろうと邪推する。

しかし、もはやその程度で解消できないほどに債務超過は膨らんでいる。

売上規模が37億円のクラブが17億円の債務超過である。しかもこれを2年間で解消しなくてはならないという。

僕は、難しいと思わざるを得ない。

仮に、日産がかつてのようにあと10億円を2年間追加融資してくれたとしよう。横浜Fマリノスは5億円の赤字クラブだから、+10億円で黒字額が5億円ということになる。これを2年間積み上げても、債務が10億円解消するだけで、あと7億円足りない。一般管理費が15億円だが、レッズの収支を見る限りはマリノスタウンのような施設関連でいくら節約する(マリノスタウンの保有をやめる)ことになっても、せいぜい年間3億円くらいが関の山だと思う。マリノスタウンを手放したら他の練習場が必要になるからそのための経費を考える必要もある。

嘉悦社長は強化費には手をつけないというような趣旨の発言をしている。ただ、事態は甘くない。日産から追加で10億円の広告料を2年間受けたとしても、もはや強化費に手を付けざるを得ないだろう。社長として言えることは、高年俸選手(中村俊輔、中澤佑二、マルキーニョスら)を放出したとしてもクラブとして弱体化はしない(=強化は怠っていない)というロジックを作り上げるくらいしかない。

ウルトラCはあるのか?

日産が年間20億円追加で出せば、もちろん余裕で乗り切ることができる。
さもなければ、残された道は横浜市やサポーター、日産以外のスポンサーがどれだけ何ができるのかという足し算(増資含む)になってくる。いざとなったらJリーグからの融資があるかもしれないけど・・。これをやってしまったら猶予期間を与えてクラブライセンス制度に踏み切った意味がなくなってしまうし、リーグとしての示しが付かないから個人的にはやめてほしい。

あとは、借入金を株式に変換するデット・エクイティ・スワップ(DES)で債務を減らすやり方もあるけれど、横浜Fマリノスは資本金3100万円で大株主は日産。DESをやるとたぶん金融機関が筆頭株主になってしまうのではないかと・・。あんまり詳しくないけど、これは日産的にも横浜Fマリノス的にもよろしくないのではないかと思われ。

2014年度の決算が出るまであと2年。横浜Fマリノスだけの問題でもないし、皆で考えていかないといけないですね。個人ができる行動としては拙ブログのコカ・コーラを飲んで、カルビーのポテトチップスを食べるをどうぞ(ステマ)。



tags クラブライセンス制度, 債務超過, 嘉悦社長, 日産, 横浜Fマリノス

少しでも日本サッカーに貢献するために、僕らのできること。

今回は身も蓋もない、お金の話。僕らにできる、Jリーグやクラブへの金銭面での貢献を考えてみる。

クラブの収支を眺めてみる

数年前からJリーグは各クラブに財務状況の開示を義務付け、毎年8月くらいに前年度の各クラブの簡易的な損益計算と貸借対照表を公開している。
2011年度のクラブ決算一覧
(2013年7月12日追記:2012年度のクラブ決算一覧が公開された)

細かいのを見るのが苦手な人は、損益総括の表の一番下と貸借対照表の一番下だけ見れば良い。
損益総括とは、クラブが該当年度に黒字か赤字かを指す。
貸借対照表は、簡単に言えばクラブのお財布にどれくらいお金が残っているかと考えれば良いかなと(厳密には違うけど)。

こうやって見ると、2011年度は山形、鹿島、横浜FM、清水などが赤字だということが分かる。一方で、仙台、浦和、柏、川崎Fなどは黒字だ。

貸借対照表を見ると、2011年度時点で財務的にまずそうなのは横浜FMや神戸だと分かる。

なぜ収支が大切なのか

赤字や黒字かは個人のお小遣いで考えても重要なので、そこに無頓着ではまずいだろう。これまでも横浜フリューゲルスや大分トリニータのように財務が取り沙汰されることは何度かあったが、昨今財務が若干注目を浴びているのは背景が異なる。

Jリーグクラブライセンス制度の導入である。

長期的に健全なリーグにするために、ライセンス基準を満たしたクラブだけJクラブとして認可しますよ、という制度である。例えばアカデミーチームを有することとか、スタジアム収容人数など事細かに基準が設けられている。

この中に、財務基準というものがあり、以下の2つが示されている。

  • 3期連続純損失を計上していないこと(12-14年度から算定)
  • 債務超過でないこと(14年度から算定)

さて、ここで先程の11年度のクラブ決算一覧をもう一度振り返ってみる。横浜FMはなんと10億円債務超過である。そしてちょうど本日(2013年7月9日)、横浜FMはクラブHPで2012年度の決算を公開したのだが、なんと12年度は特別損失も加えれば約7億円の赤字で、累積損失は17億円に膨れ上がっているではないか。14年度までにこれを解消しないと、横浜FMはクラブライセンスを没収されるわけである。

では、僕らにできることは何か

各クラブの経営に関して口出しは難しいので、それはそれでがんばってもらうしかない。

では僕らは手をこまねいて待つしかできないのかというと、そんなことはない。これはお金の問題なので、貢献の仕方はいろいろあるだろう。

先ほどの決算表を見ると、売上の項目は以下の5つに分かれている。

  • 広告料収入
  • 入場料収入
  • Jリーグ配分金
  • アカデミー関連収入
  • その他収入


●入場料で貢献する

この中でもっとも個人としての貢献でイメージしやすいのは、「入場料収入」だろう。ホームゲームのスタジアムに足を運べば、それが直接的にクラブの売上につながる。年間シートなどもクラブにとっては喜ばれる。また、金銭的側面以外でも選手に与える力は絶大で、もっともクラブに貢献する行動と言える。


●グッズを買って貢献する

スタジアムに足を運ぶことが様々な理由でできない人もいるだろう。しかしそこで諦める必要はない。「その他収入」にはグッズ売上などが含まれている。ユニフォームやタオルマフラーなど、クラブの公式グッズを買えばそれもまた直接的にクラブの売上につながる。


●広告料に間接的に貢献する

しかしグッズには欲しいものがないかもしれない。それでもまだ、貢献の仕方はいくらでもある。先ほどの表を見てもらえれば分かるが、結局売上の大部分を占めているのは「広告料収入」、すなわちスポンサー料である。

スポンサー料というものは景気に左右されると言われるが、厳密には違う。スポンサー企業の決算に左右されるのである。お金に余裕がなければ広告費というものは縮小される運命にある。つまり、贔屓のクラブのスポンサーには黒字になってもらわなければ困るのである。

例えば財務が危うい横浜FMのスポンサーには、日産、三栄建築設計、アディダス、ANA、サントリーなどが名前を連ねていることが分かる。企業の種別によっては個人的な貢献が難しいところもあるが、要はこれらの企業の商品を買えばそれが間接的に横浜FMの助けになるということは間違いない。

JALかANAに乗ろうと思ったら、ANAを選択する。
プーマかアディダスか迷ったら、アディダスを選択する。
アサヒのスーパードライではなく、サントリーのモルツを飲む。

無駄に買う必要はないが、商品選択の意思決定要因に贔屓クラブのスポンサーかどうかという考えを加えれば、日常からクラブをサポートしているという楽しみも増えて良いのではないだろうか。


●Jリーグを支えることで、クラブに貢献する

また、売上項目の中に「Jリーグ配分金」というものもある。これはJリーグから成績や人気などに応じて各クラブに与えられるお布施である。当然、Jリーグとしても収支を管理しており、Jリーグの収支が怪しければこの金額も減額される可能性がある。

Jリーグを潤わせるために、スポンサー商品選択の術がここでも使える。Jリーグには、マクドナルドやコカ・コーラ、カルビーなどの企業が莫大なスポンサー料を提供している。

特にこだわりがなければ、コカ・コーラを飲んでカルビーのポテトチップスを食べればそれがすなわち間接的なJリーグへの貢献である。

こういう選択をする人が多ければ、スポンサードする意味が企業側にとって大きくなる。それでスポンサー料が増額されるかは微妙だが、少なくとも継続の判断要素にはなるだろう。ツイッターでわざとらしく「横浜FMのスポンサーになってくれているからサントリーのモルツ飲んでる!」とか書くのもアリかもしれない。


●個人スポンサーを募っているクラブもある

お金持ちの方は、クラブに対して個人スポンサーなんてものもあるからそこからであれば最大級に直接的な金銭的支援もできる。

スタジアムに行くだけが貢献ではない

もちろん、スタジアムに行くことは大事だし、それは最大の貢献でもある。だけど、それだけがクラブを支える方策ではないということ。いろんな考え方があるし、何が偉くて何が偉くないとかでもない。今回はお金の話だったけど、お金じゃない貢献だっていくらでもある。

みんなが大好きなサッカー。
みんなで支えていこうぜ。



tags クラブライセンス制度

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プロフィール

profile_yohei22 yohei22です。背番号22番が好きです。日本代表でいえば中澤佑二から吉田麻也の系譜。僕自身も学生時代はCBでした。 サッカーやフットサルをプレーする傍ら、ゆるく現地観戦も。W杯はフランスから連続現地観戦。アーセナルファン。
サッカー書籍の紹介やコラム、海外現地観戦情報をお届けします。

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