酸いも甘いも経験したプロフットボーラーの告白。

本書はプレミアリーグの匿名フットボーラーが、身の回りで起こっている真実をありのままに告白した暴露本である。

フットボーラーも1人の人間、しかも若くして大金を手にした選手も多い。もとよりプロスポーツ選手になるような人は我が強かったりエゴイストであったり自己顕示欲が強かったり、何かしらそういった側面を持っているであろう。そういった人が地位も名声も手にしたら、人生が若干おかしな方向にいってもおかしくはない。

おかしくなる要因は、たいてい酒(ドラッグ)、ギャンブル、女である。この三拍子が派手なエピソードを伴って本書に登場する。

ただ、激動の人生ゆえの悩みも多いようだ

プロスポーツ選手は花火のような人生なのかもしれない。一瞬は輝くけれど、すぐに散ってしまう。特にフットボールは選手生命が短く、よほどのことがなければその後に解説者やコーチ、監督として継続して名声を獲得し続けることは難しいだろう。そうすると、トップアスリートであるがゆえの悩みも抱えていることも理解はできる。本書にもこのように記されている。

サッカーで起きることの95%は、閉じられたドアの向こうで起きていると言われる。真実は小説より奇なり、とはまさにこのことだろう。実際のところ、土曜に行われる90分の試合で、人々がサッカーに対して抱く印象はほとんど決まってしまう。試合の分析記事を読んでもほとんどが表層的で、つまらない物語調に仕上げられている。若くて健康で、全てを手にしたようなアスリートたちがどれだけ多くの悩みを抱えているか、皆さんは想像もつかないだろう。(P.22-23から引用)

ただこれは、自分でプロフットボールの道を選んだ結果であって、誰のせいでもなく自分の責任である。サラリーマンを選択した人も、自営業を選択した人も、アスリートの道を選んだ人も、同じだ。同情すべき点ではない。

Jリーグはセカンドキャリア支援を充実させようと動いているが、あの動きも少し違うのかなと個人的には思っている。自分で選んだ人生、そのセカンドキャリアを支援してもらわないと切り開けないなんて情けないではないか。サラリーマンをクビになったら誰かがセカンドキャリアを支援してくれるのかといえばそんなことはない。

財務に関する個人的な興味

小市民からすれば、一部のプロアスリートは給料をもらいすぎていると感じることがある。そんなにもらっていたらもうそれ以上いらないんじゃないの、と思うくらいもらっていても、年俸の交渉は引っ張るし、さもなければ移籍も辞さないという態度で臨むということはよく見かける。

一方で、クラブレベルでは深刻な財政難を抱えているケースはざらで、破綻するクラブも後を絶たない。そして財政を逼迫させている要因は明らかに選手や監督への給料や移籍金の高騰である。

この現実について選手はどう感じているか個人的には気になっているのだけど、明確な一意見が本書に書かれていた。

選手たちはクラブの財務状況に対し道義的責任など感じていない。クラブが困難な状況に陥り、悪い場合は破産してもだ。不運なことだと思うが、われわれの落ち度ではない。(P.174から引用)

まあ、これもサラリーマンと同じか。自分の会社が赤字でも、自分の給与を下げることに納得はできないだろうし。違いがあるとすれば、額の絶対値くらいかしら。もらいすぎだと言っても、働きに応じた額だといえばどちらにも理がある。ミクロ経済とマクロ経済をすり合わせようとすると合成の誤謬が起こることと同じで、経営者と従業員は分かち合えない運命にあると捉えるしかないということか。

結局シークレットフットボーラーは誰なのか

本書内には著者であるシークレットフットボーラーが接触した選手や在籍したチームなどが結構な情報量で書かれている。それらを組み合わせれば物好きが選手を特定できるのではないかと思うのだが、どうやらそうでもないらしい。Who is The Secret Footballer?というサイトがあり、そこで未だに議論が続いているようだ。Leading Candidates(最有力候補)として何名かリストアップされており、筆頭はデイヴ・キットソンとのことらしい。もし違っていたら本人にはえらい迷惑なことだ。

個人的には、本書内には真実も書かれているだろうが、フィクションもかなり混ざっているのではないかと感じる。そうでなければ、ネット民によってすぐに特定されるのが関の山だと思う。

読み物としておもしろいが、最後に個人的に信じたいのは誠実さ

暴露本といっても差し支えない本書は、野次馬根性あふれる読者にとって刺激的でおもしろい内容になっている。僕も楽しく最後まで一気に読んだ。

ただ、それはあくまで読み物としてのおもしろさ。自分自身が結局最後に応援したいのは、誠実に生きている選手たちだ。長谷部か!と突っ込みたくなるような、そういう選手。日本はそういった意味で、良い国だし良い選手がそろっていると思う。選手本はそんなに多く読んでいるわけではないし、選手本がその選手の全てを明らかにしているわけではないが、佐藤寿人の『小さくても、勝てる。』(筆者のレビューはこちら)や内田篤人の『僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版』(筆者にレビューはこちら)あたりを読んだらその誠実さに心打たれる。こういった選手たちに、活躍してもらいたいし、こちらも応援してサポートしていきたい。

 



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