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タグ「ピッチのそら耳」の一覧


20年の歴史に幕。

サッカー批評ISSUE64「サッカーメディアを疑え」の企画「サッカーメディア編集長座談会」にてエル・ゴラッソ元編集長の川端暁彦氏が次のように語った矢先の出来事だった。

紙メディアやってるところは総じて撤退戦だと思うんですけど、どこまで撤退するのか、削られた領土の中でどうやって国を成立させるか、みたいなそういう戦いだと思う。(P.68から引用)

― 週刊サッカーマガジン廃刊

サッカーマガジンがなくなるわけではなく、月刊誌として生まれ変わるので廃刊は言い過ぎかもしれない。しかし、実態は編集長から編集スタッフまで総取っ替えとのことらしいので、ベースボール・マガジン社としてはひとつのパラダイムを終える意気込みなのだと感じる。

紙メディアの出版ペースと役割とは

冒頭に編集長の北条聡氏が「読者のみなさまへ」と題して次のように語っている。

現在の週刊誌へと刊行形態が変わったのは、ちょうどJリーグ元年にあたる、1993年の秋のことでした。日本サッカー界のアイコン(象徴)である、若き日のカズと井原正巳の2ショットが『週刊第1号』の表紙を飾っています。
(中略)
週末、全国各地で開催されるプロチームの熱戦を堪能し、日本代表の躍進に声をからす、新しいサッカーライフの確立が「週刊化」への引き金でした。Jリーグ開幕から、わずか半年後のことです。

 月刊では遅すぎる
 日刊では浅すぎる

(中略)

しかし、時代はめぐり、週刊誌の位置づけは、20年前とは大きく変わりました。

 週刊では遅すぎる
 週刊では浅すぎる (P.5から引用)

まさにこの言葉が全てを表している。

ネットの全盛期、速報性で紙メディアが勝てる余地はない。スピードという土俵では勝負できない。

ではコンテンツの質ではどうか。月刊誌が質の高いコンテンツを提供しているかどうかはさておき、週刊誌で毎週質の高い記事を送り続けることは至難の業である。玉石混交ではあるが、記事であればネットで無料で読むこともできる。

また、週刊誌の敵はネットの記事や月刊誌ではなく、むしろスマホで遊べるソーシャルサービスやゲームである。隙間の時間を埋めるために雑誌を買う必要が時代とともに逓減している。

要は、週刊誌ならではの武器がないのだ。

厳しいがこれが現実である。月刊誌とて、武器があるかと言えば怪しい。サッカー専門誌だけでなく、雑誌メディアそのものが同じ難局にさらされている。

月刊サッカーマガジンは勝負できるのか

月刊誌としてのタイトルは「サッカーマガジンZONE」というらしい。特別編集長として宮本恒靖氏を迎え、記念すべき初号はその宮本氏が表紙を飾る予定とのこと。

月刊らしく特集テーマを2つ組んで、マッチレポートなどはなさそう(あっても取り扱いは限りなく小さそう)な雰囲気である。

予定される特集テーマも発表されている。

■特集Ⅰ 世界一流のマネージメント
「ウチダを売り出せ!」シャルケの日本向けPR
ドイツNo.1ドルトムントのブランドイメージ戦略
アーセナルのスタジアムビジネス
ファーガソン流のリスクマネージメント
一流のチーム分析術

■特集Ⅱ アウトローの系譜
マラドーナ、イブラヒモビッチ・・  (P.32より引用)

既存の月刊誌とどうやって差別化していくのか、コンテンツを見る限りは厳しそうな匂いがぷんぷんする。とりあえず初号は買ってみようと思う。11月22日発売で、以降は毎月24日発売とのこと。

変わらない武智氏の姿に感銘を受け、紙面を閉じる

武智幸徳氏のコラム「ピッチのそら耳」も558回目の今号で最終回。その他の連載が「最終回なので」「週刊サッカーマガジンとして最後なので」という別れの言葉をそれぞれのコラムに綴る中、武智氏は「来週も書くよ」といういつもと変わらぬコラムでそっと幕を閉じた。連載は終わるが、ピッチで行われるサッカーという至福は明日もこれからも続くよ、そこから聞こえる交響曲に明日も耳を傾けるよ、というメッセージが詰まっているように思えてならない。

このコラムが終わるのは寂しい。厳選された79回のコラムを書籍化した『ピッチのそら耳―サッカー的探求術』(筆者のレビューはこちら)は500回を数えた記念として発売された。個人的には、連載終了を記念して「そら耳その2」の出版を期待したいところである。



tags サッカーマガジン, ピッチのそら耳, 北条聡


ウィットに富んだ表現で読者をひきつける数少ないサッカー記者のコラム集。

初めて武智幸徳さんを知ったのは日経新聞のコラムだったように記憶している。試合で起こった現象をその場限りの一過性のものとせず、歴史や国民性などまで含めたストーリーとして切り取り、さらにそれをユーモラスに表現していることに衝撃を受けた。それ以来武智幸徳さんのファンとなり、これまで上梓された『サッカーという至福』と『サッカー依存症』も読ませていただいた。特に『サッカーという至福』は今のようにサッカー本が少ない時代(1999年)に刊行されたものでとても重宝したことを覚えている。

そんな武智幸徳さんがサッカーマガジンで連載していたコラムが500回を数えた記念として、編集部で79回をセレクトして書籍の形で世にお目見えしたのが本書である。

東野圭吾的ではなく、伊坂幸太郎的

武智さんの優れているところは、ピッチを見る目や切り口もさることながら、その表現力にあると僕は思っている。

サッカージャーナリストの多くは失礼を承知で言えば、表現自体はそこまで巧くない人もいる。彼ら彼女らはそれを補って余りある「サッカーを見る眼」で読者をひきつけている。

一方で武智さんは修辞技法や比喩の活用など、とにかく表現が巧い。もちろん、サッカーを見る眼もある。邪推だが、他の記者と同じような表現になることを避けているフシもある。

恐れ多くも売れっ子小説家を例えにするのであれば、前者の多くのサッカージャーナリストは東野圭吾的で、武智さんは伊坂幸太郎的だ、という気がする。

ロジカルにストーリーを展開しスッキリとした結末に収斂させていく小説を描くのが巧いのが東野圭吾さんで、ストーリーを意識しつつも1つ1つの文章や単語の表現がユーモラスであることも同時に大事にしているのが伊坂幸太郎さん(だと僕は思っている)。

どちらも到底マネのできるレベルではないが、仮にどちらのほうがマネしやすいかと聞かれたら、多くの人が東野圭吾さんと答えるのではないだろうか。それは、ユーモラスな表現をすることには発想の泉がないと難しいが、ストーリーをロジカルにすることは練習すればできそう(大層なことを言ってすみません)な気がするからである。

武智さんの魅力は、仮に武智さんと同等レベルのサッカーを見る眼があったとしても到底追いつけないような独特の言い回しができることであり、これはサッカー界では稀有な存在であると僕は認識している。

だからこそ武智さんが惹かれるオシム節

そんな武智さんはオシムさんに相当惹かれていたようだ。ご自身がユーモラスな表現力の持ち主であるため、おそらく監督の言葉などに物足りなさを感じたことは数多あることだろう。そこに登場したイビチャ・オシムという異才の持ち主。

2003年4月2日掲載のコラム「厳父のユーモア」でも以下のように語っている。

監督の能力を見ぬくことは至難の業で、世界中のありとあらゆるクラブが監督選びに失敗している。監督選びを生業とする人たちでそうなのだから、オシム監督が成功するかどうかなど私に分かるわけがない。しかし、何だか愉快な人であることはハッキリしている。妙にこの人に、ひきつけられてしまうのだ。
3月15日のナビスコカップ、市原ーC大阪戦でのこと。Jリーグでは、ハーフタイムに両チームの監督が選手にどんな話をしたか、後半が始まるころにプレスリリースが回ってくる。この試合で配られた紙を見て、思わず微苦笑を誘われた。そこにはオシム監督の話として「私の長い経験からいって、このままチャンスを失い続けると負ける」と書いてあった。
Jリーグが発足して11年目を迎えたが、ハーフタイム・コメントで、こういうものを見たのは初めてである。試合は本当に市原が1−2で逆転負けした。(P.14から引用)

煮ても食えないようなオシムさんのコメントの数々。武智さんはほくそ笑みながらその1つ1つを噛み締めていたのではないだろうか。79回に厳選されたコラムでもオシムさんは何度か登場するくらいだから、500回でいえば相当数登場しているのかもしれない。

本書を読んで、残りの421回およびそれ以降も読みたくなる

毎週コラムを書き続けそれを500週間も続けるとはとんでもない偉業だと感じるわけだが、それを謙遜して表現している「はじめに」の武智さんの言葉もまたいい。

これだけ長く続けられたのは本人の努力、節制の賜物では一切なく、しみじみ思うのはサッカーというゲームの素晴らしさです。サッカーには一つとして同じゲームがない。毎試合、何かしら違っているから、書く内容を無理をしなくても、何かしら違ったものになる。サッカーのそういう奥深さにどれだけ救われてきたか知れません。(P.3から引用)

本書は79回分のコラムを以下の4部で構成している。

  1. Jのある風景
  2. 代表となでしこ
  3. ハーフタイム
  4. 海外を愉しむ

Jリーグも、代表も、海外も、サッカーを取り巻くエトセトラも、すべて武智さんらしさが出ていて読み応えがある。かといって1つのコラムは3ページ程度なのでしつこくなく、さらっと読むことができる。

これが毎週読めるなんて、サッカーマガジン、やるなぁ。ちょっと買ってみたくなりました。



tags ピッチのそら耳, 武智幸徳

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プロフィール

profile_yohei22 yohei22です。背番号22番が好きです。日本代表でいえば中澤佑二から吉田麻也の系譜。僕自身も学生時代はCBでした。 サッカーやフットサルをプレーする傍ら、ゆるく現地観戦も。W杯はフランスから連続現地観戦。アーセナルファン。
サッカー書籍の紹介やコラム、海外現地観戦情報をお届けします。

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