UEFAチャンピオンズリーグを語る上で必読の一冊。

ヨーロッパの最高峰の試合が繰り広げられるUEFAチャンピオンズリーグ誕生から2011-12シーズンで20年。本書の特徴はまさに「はじめに」で著者の片野道郎氏が記した内容が的を得ている。

本書は、CL20年の歴史をひとつのクロニクルとして通時的に追いつつ、背景となる社会からサッカー界そのものに至る様々な環境の変化、そしてそれがクラブの栄枯盛衰やピッチ上の勢力地図にどのように反映し影響を及ぼしてきたかという具体例まで、その全体像を俯瞰的に視野に収めようとする狙いを持っている。(P.10より引用)

CLの度重なるフォーマット変更はテレビ視聴者として第三者的に知っていたが、その背景にUEFAとクラブチームの対立や商業的な要因が複雑に絡んでいたことを恥ずかしながら本書を読んで初めて知った。

また、11-12シーズンでキプロスのアポエルというチームがベスト8入りの大躍進を果たしたことは記憶に新しいが、それは偶然の産物ではなくUEFAが取り組んだ「中堅・弱小国の底上げ」の結果であると知れば、とても興味深く、意味のある躍進であると噛み締めることができる。

そして現UEFA会長であるプラティニの崇高な理念にも触れ、これほどまでに改革を推進している人物であるということも初耳だった。

CLの歴史は商業的な側面と切り離すことはできず、結果として資本を持てるチームと持たざるチームの格差が顕著になっていくことは避けられない事実であった。本書187ページには以下のような記載がある。

DFML(筆者注:デロイト・フットボール・マネー・リーグと呼ばれるレポート)に示されたランキングと売上高のデータを見て改めて驚かされるのは、CLのピッチ上に表れた結果とクラブの売上高との間にある強い相関性である。つまるところこのレポートには、チームの競争力を左右する最も大きな要因は「カネの力」だという、身も蓋もない現実が示されているということだ。

もちろんこの流れは完全に止めることができるものではないが、歯止めをかけるために立ち上がったのがプラティニである。UEFA会長選挙への出馬表明の際のプラティニの言葉がその決意を端的に表している。

フットボールの未来を、ビジネスマンや弁護士の手からフットボーラーの手に取り戻す時が来た。(P.222から引用)

現在もなお続くプラティニの改革は、今後の勢力図をおおいに塗り替える可能性も秘めている。その最たるものが、「ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)」の導入だろう。FFPは端的に言えば「3年間の収支をトントン」にしなければ、UEFA主催大会への参加を認めないというもの。もちろん、オーナーのポケットマネーを使って補填することもNGである。FFPは段階的に適用され、18-19の審査(対象期間は15-16から17-18の3年間)から完全適用される。移籍マーケットや選手の給与に多額の資金を投じているクラブは抜本的な対策を投じなければUEFA主催の大会から締め出されてしまう。収入の多くはチャンピオンズリーグの放映権料であるため、締め出しはクラブとしては何としてでも避けたいだろう。今後どのような対策を各クラブが投じてくるか、非常に楽しみである。

また、UEFAは現在CLとELの二本立てとなっている大会フォーマットを、16-17シーズンから両者を統合して新CLとし、64チーム参加とする構想を検討中と伝えられている。この変更の流れも、単なる「変更」と捉えるよりは本書で伝えられている20年の歴史的背景を知った上での継続的な改革の一環として見ることでより納得的なものとして理解できる。

ここまでの味わい深いクロニクルを一冊の本として分かりやすくまとめた片野道郎氏は真のジャーナリストであると思う。著書にある『モウリーニョの流儀』や『アンチェロッティの戦術ノート』(アンチェロッティとの共著)も名著であるので、興味ある人はぜひ目を通してほしい。

 


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2003年11月25日サンシーロにて筆者撮影(CLグループステージ インテル1-5アーセナル)



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