サッカーを知り尽くしたイタリア人監督5名による岡田ジャパンへの的確な指摘。

岡田ジャパンは結果的に南アフリカW杯でベスト16に入った。岡田監督は日本で初めてアウェーのW杯で勝利と決勝トーナメント進出の歓喜をもたらした監督となり、名将と崇められている。しかしW杯が始まる前、特に日本での親善試合のセルビア、韓国に連敗した時期はメディアから総バッシングを受けていた。サポーターも口々に「日本はダメだ」とつぶやき、主たるサッカー解説者はこぞって日本の予選リーグ敗退を予想していた。

では、その時期の岡田ジャパンのサッカーのどこがダメで、どのように改善すればよくなったのだろうか。もちろん当時も様々なメディアが問題の指摘をしていた。無駄な走りが多い、後半にバテてしまう、得点のパターンが見えない、などなど。メディアという特性上そこには「分かりやすさ」が必要で、その最たる例が切り札論である。香川を使え、小笠原を呼べ、宮市はどうだ、と紹介された「日本代表候補」は枚挙にいとまがない。しかしサッカーはそう単純なものではない。人を変えればうまくいくのであれば誰もがやっている。交代を早めればうまくいくなら誰もがやっている。サッカーは複雑系だから、局所的な見地では当て感と相違ない。大局的なアプローチが必要である。

そこに真摯に解答を示してくれているのが本書である。イタリア人監督5名が日本代表の試合の映像を見て、特に守備面について多くの指摘を与えてくれている。分析対象の試合はワールドカップ予選のウズベキスタン戦、オーストラリア戦、カタール戦、キリンカップのベルギー戦、ヨーロッパ遠征のオランダ戦、ガーナ戦である。

本書の優れているところは、何より図を多用して解説してくれているところである。抽象的な戦術論ではなく、試合の中で実際に発生したシチュエーションをもとに具体的な解説をしてくれている。パスコースが限定されていることや、サイドバックのポジショニング、プレッシャーの掛け方が中途半端で逆に相手の攻撃を加速させていることなど問題ケースは枚挙にいとまがない。解説の中には「ん?それはこういう意図があったからだろう」と指摘したくなることもあるが、具体的で実際に発生したプレーに対する指摘なのでこちらの意見との相違が明確になり自分の中に落としこみやすい。意図が明確なプレー解説は自分のプレーに対する考え方の体系的な整理にも役立つ。

映像を見ながら問題のシーンを切り取って具体的な指摘をすることはそう簡単にできることではない。本書の中でも5人の監督の貢献を次のように表現している。

5人いずれもが、異口同音に「日本代表監督とそのスタッフ、全選手に対して最大の敬意を払って分析を行いたい」と繰り返し述べていたことを改めてここに記しておきたい。(P.8から引用)

結果として岡田ジャパンは中村俊輔を中心としたパスサッカーおよび前線からのプレスから戦術変更をしてワールドカップに臨んだため、5人のイタリア人監督が見た日本代表とはずいぶんと趣の異なるサッカーでW杯ベスト16入りを果たすこととなった。いつかまた主導権を握るサッカーでW杯上位進出を目指すとき、本書の内容が参考になるときがくるだろう。

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2010年6月14日の南アフリカW杯日本対カメルーンの試合にて筆者撮影。日本は1-0でカメルーンを退け自国開催以外のW杯で初勝利をあげた。



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