170センチのストライカー、佐藤寿人の思考とは。

2012年までにJ1/J2合計で167得点。これは歴代トップの記録である。2013年は15節終了時点で12ゴール決めており目下得点王、10年連続2ケタ得点を達成した佐藤寿人の勢いはとどまるところを知らない。

そんな佐藤寿人は、小さなころから身長によるコンプレックスとずっと戦ってきたという。しかし、技術は練習で磨けても身長はどうすることもできない。そこで佐藤寿人が意識したこととは何か。

本書はタイトルにもある通り、「小さくても、勝てる。」という佐藤寿人が歩んできた歴史そのものを本人の視点で語り尽くしたものである。

すべてのゴールを言葉にして説明できる

佐藤寿人曰く、ごっつぁんゴールでさえ説明が可能とのこと。ここに、佐藤寿人がプロとして活躍を続けられる所以がある。

そんな僕がプロとしてここまでやってこれたのは、ゴールを奪うために、「思考」することをやめなかったからだと思う。僕は壁にぶち当たるたびに、挫折するたびに、どうプレーしたらいいか、ずっと考え続けてきた。(P.3-4から引用)

動き出しの早さや得点する感覚などは、すべて思考の結果、そして経験から培われたものであって、それが佐藤寿人をストライカーとして成り立たせているということなのだそうだ。だから、テレビで海外のサッカーも観る。そこに上手くなるためのヒントがあるから。バティストゥータやインザーギには随分と感化されたようである。

だからこそ、こんな発言を力強くできるということなのだろう。

2012年シーズンは34試合に出場して22ゴールを決め、初めてJ1得点王になることができた。その22得点すべてが偶然生まれたものではなく、考え、準備し、そして動いたからこそ生まれたゴールである。(P.58-59から引用)

双子の兄勇人の存在、そしてキャプテンとして

本書では本人ならでは、という佐藤寿人ファンにはたまらないエピソードも多数盛り込まれている。その中でも際立つのが、双子の兄である佐藤勇人との関係だろう。お互いライバルでありながら仲間、そしてかけがえのない兄弟でもある。佐藤勇人がジェフ千葉の一員としてJ1/J2入れ替え戦に挑んでいる同じ時期に、佐藤寿人はJ1で優勝争いの佳境を迎えていた。

そんな状況における2人のメールのやり取りが全文公開されていて、思わず目頭が熱くなった。やはり兄弟っていいな、とそう思わずにはいられない。

また、キャプテンとしてどのような考えでチームを引っ張っているかについての言及も多い。特に、自分自身が若い頃に試合に出られないような経験もしていることから、若手には気を使いながら気持ちを汲んで接しているようだ。ただ、漠然と練習していても成長はないので、そこは奮起を期待しているようである。

監督から与えられたトレーニングメニューをただ漠然とこなすのと、これは試合の何をイメージしているのか、どういう状況に有効なのかを考えて練習するのとでは、吸収できる量や質が違ってくる。(P.138から引用)

これはビジネスでも同じことが言える。単に与えられた業務をこなすだけの人と、全体像や自分の仕事のアウトプットが何に使われるかをイメージして仕事している人とでは、成長のスピードがまったく異なる。この辺り、若いころはイメージしにくい人もいるので、キャプテン佐藤寿人みたいな人に早く出会えているということは選手にとって幸せなこと。そこから第二第三の佐藤寿人が出てくることを祈るばかりである。

全体を通じて伝わってくる誠実さ

佐藤寿人は、なんとなく愛されているイメージがある。サンフレッチェのファンではなくても、佐藤寿人のことを悪く言う人は少なくとも出会ったことがない。得点を量産しているのに代表になかなか呼ばれないという悲劇のヒーロー的な側面が日本人のメンタリティにあっているのかもしれない。

ただ、本書を読めば愛される理由が決してそれだけではないことが分かる。J2降格の憂き目にあったときの本人の選択。海外クラブからの打診への対応。お金よりも大事なものがあると、言い切れる心意気。

もちろん、お金を大事にしている選手が悪いわけではない。ピッチで結果を出すことが選手としては最優先事項だから、それ以外の要素に部外者がとやかく言うことはできない。しかし、にじみ出る人の良さというか、他人思いで誠実なところ、これが惹きつけているのだと思う。そういった側面も本書からしっかりと受け取ることができる。

今後佐藤寿人の代表招集はあるのか

これはまた別途記事をあげようと思っているが、ザッケローニが佐藤寿人を使うことは、おそらくないと思う。ただ、7月末に開催される東アジア選手権、これに招集される可能性はおおいにある。そこで結果を残せるか。己の力を試す機会もなく2014年を過ごすのではあまりにかわいそうである、というくらいの実績をもった選手。活躍を楽しみにしたい。



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