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スペインに精通した指導者とジャーナリストによる日本サッカーの育成環境への提言。

本書は、育成、保護者の関わり方、Jリーグの役割、メディア活用の観点などから日本がサッカー大国になるための提言をまとめたものである。タイトルの「バルサ」に関しては、現代サッカーの象徴として、あるいは倒す(超える)べきラスボス的存在としてフィーチャーされただけであり、本書内にバルサに関する話題はほぼ出てこない(著者の村松氏のブログタイトルが日本はバルサを超えられるなのでそこから取っている)。なので単純に「日本サッカーへの提言」としての読むのが良い。

2種類の提言

すごく大雑把に大別すれば、本書は2種類の提言に分かれている。
1つは、環境やシステム面で日本が不十分である点に関しての提言。
もう1つは、個人が今からでも始められるような、小さな一歩としての提言。

提言が実現できたときの効果でいえば、圧倒的に前者の方が影響力が大きい。それは誰もが分かっていることだと思う。しかし、それはいち読者からすれば雲の上の話であり、「理屈は分かるがそれは個人としてはどうしようもない」というのが実感値だと思われる。もちろん、変わりたいと思わなければ環境もシステムも変わらないので、声をあげていくことは大事なのだけれど。

一方で、全体から見れば効果は小さいかもしれないけれど、個人レベルで考えたときに行動に移すヒントになるのは後者の方である。

本書でいえば、「個人から始められる提言」はANGLE2「育成年代の指導者が目指すべき方向性を探る」に集約されている。その中から特に印象に残った点を紹介したい。

育成年代における戦術指導はどうあるべきか

著者のお二人が、日本の指導でスペインと比べて圧倒的に足りないと感じているのが戦術指導だという。戦術というと育成年代には早すぎるという意見もあるが、村松氏は戦術を「駆け引き」と捉えた上で次のように語っている。

「相手との駆け引き」や「状況判断」が戦術であるということ。サッカーは個人スポーツではなくチームスポーツであるため、一人で相手と駆け引きするのではなく、チームメイトと力をあわせて相手チームと駆け引きをする必要があります。
(中略)
プロでも小学校低学年でもこの戦術の基本に変わりはありません。「相手との駆け引き」は幼稚園児でも十分に理解できるし、「仲間と協力する」ことも幼稚園児になれば理解出来ます。(P.57から引用)

その上で、駆け引きをするために段階的にサッカーの原理原則を教えていくこと。この指導をないがしろにしてテクニックに奔走していてはいけないとのことである。

この辺りは最新のトレーニング理論ではどの指導者も語っている。ジュビロ磐田の黄金期を支えた鈴木政一氏は『育てることと勝つことと』(筆者のレビュー)の中で「判断力」の向上こそが指導の中心にあるべきで、年齢ごとに到達すべきレベルを示した上で判断力の重要性を説いている。判断力とはすなわち駆け引きの基本になるものである。

しかしやはり街クラブレベルでは浸透していない、もしくはやり方が分からないということなのかもしれない。単に「バルセロナのようなチームを目指したい」と言っても無理があるわけで、身の丈や選手の特徴を踏まえた上でトレーニングスタイルを次のようなポイントを踏まえて構築することを村松氏は薦めている。

・好きなプレースタイルのプロチームを見つけ、そして試合をたくさん見る
・優先順位を明確にする(例:勝利よりも試合内容を優先)
・好きなトレーニングスタイル(を実践している指導者)を見つけ、そしてたくさん見学する
・書籍や指導者仲間との情報交換等を通じて、好みの練習メニューを見つける
(P.63から引用)

大切なことは判断のポイントを教えるということ

指導者に常につきまとうジレンマとして、どこまで教えてどこから教えないのか、という点がある。判断力を養うということはプレイヤーに判断をさせる環境を与えるということに他ならない。しかし全てをプレイヤーの判断に委ねていてはもっとよい判断ができたかもしれないポイントに気づかないまま過ごしてしまうかもしれない。

村松氏もこのように語る。

自主的な選手、判断力のある選手を育てるためには、最初から「判断しろ」と言っても不可能です。なぜなら、そのための判断材料も戦術的な知識もない状態では、駆け引きはできないからです。(P.67から引用)

はじめは判断のポイントになるような具体的な指導をしていき、判断材料を揃えた上で「考えろ」という指示が噛み合ったときに自主的な選手が生まれる、という順番である。

あくまで最終到達地点は自主的に駆け引きできる選手を育成することであり、そのために必要な判断ポイントは教える、と。指導者の考える通りのプレーをさせて試合に勝つことが目的ではないので、そこを見誤ってはいけない。

また、ボトムアップ理論と呼ばれる「教えない指導」に関しても以下のように紹介している。

前述のトレーニングスタイルの確立にも関係してくる提案として、「教えない指導」が挙げられます。これは日本人の気質に合った、日本独自のスタイルと言えるでしょう。その「先駆者」的存在でもあり、広島観音高校を全国区の強豪校に育て上げた畑喜美夫先生(現安芸南高校)の「ボトムアップ理論」(教えない指導法)は、指導者不足の日本の育成環境にとってとても興味深いアプローチであり、私は最適な方法の1つになり得ると考えます。(P.65から引用)

ボトムアップ理論を紹介したDVD『質を上げ生徒の考える力で勝負する!畑喜美夫・ボトムアップ理論の概要と実際[DVD番号 tv09]』も発売されている。指導は理論だけでなく具体的な方法とともに学習しないとなかなか理解が難しい。村松氏が指導の見学を薦めている所以でもある。

こうした草の根的な提言が日本サッカーを変えていく

街クラブレベルの指導と日本代表を強化することは次元の違う話という意見もあるだろう。しかし、そこがつながっていると考えて草の根的な活動で駆け引きのできる選手を1人でも多く育てることが、日本という国がサッカー大国として名を馳せる下地になると信じる方がなんともロマンがあって良いではないか。

日本はそもそも教育環境からして詰め込み型と言われ、それが創造性やイノベーションを阻害しているという意見もある。それが、サッカーというスポーツを通じて教育の現場では教えられない大切な判断力を養うことができるとなれば、すごくステキなことである。

本書は両者の言いたいことを簡潔にまとめた入門書

村松尚登氏と小澤一郎氏のもっと深い主張を知りたければ、それぞれの著書を読むのが良い。

村松尚登氏の『テクニックはあるが、「サッカー」が下手な日本人 ---日本はどうして世界で勝てないのか?』(筆者のレビュー)を読めば環境面における日本とスペインの違いや、指導理論としての戦術的ピリオダイゼーション理論の一端について知ることができる。

小澤一郎氏の『サッカー日本代表の育て方 子供の人生を変える新・育成論』(筆者のレビュー)は育成についての事例が豊富にまとめてあり、琴線に触れるワードも多い。

同じく小澤一郎氏の『サッカー選手の正しい売り方 移籍ビジネスで儲ける欧州のクラブ、儲けられない日本のクラブ』(筆者のレビュー)では、環境面からのアプローチとしてJリーグの移籍に関する問題点の指摘や提言がまとめられている。

  



tags 小澤一郎, 日本はバルサを超えられるか, 村松尚登, 育成


地に足の着いたサッカージャーナリスト小澤一郎氏が世に問いかける育成のあり方。

本書は、現在日本代表レベルまで上り詰めた選手、あるいはこれから上り詰めることがおおいに期待できる選手の育成年代時期に携わった指導者、保護者へのインタビューを通じて人材育成についての良い事例をまとめたものである。

小澤氏の上梓した『サッカー選手の正しい売り方 移籍ビジネスで儲ける欧州のクラブ、儲けられない日本のクラブ』(筆者のレビューはこちら)も読んだ感想として、小澤氏ほど足を使って取材を敢行しているジャーナリストはいないのではないか、と感じている。小澤氏の有料メールマガジン(2013年6月末で休刊予定)も購読しているが、精力的な取材には舌を巻く。信頼できるサッカージャーナリストの1人である。

共通している「育てた記憶がない」という証言

本書に登場する指導者、保護者に共通しているのが「育てた記憶がない」「育てたという認識はない」ということである。

いくら「練習しろ」と言っても人から言われたことは長続きしない。自ら「練習したい」「うまくなりたい」と思わせなければ真の意味での成長はない。ではどうしたら「練習したい」「うまくなりたい」と思わせることができるのか。突き詰めて考えていくと自ずと「教える」ではなく「引き出す」あるいは「引き出す環境を整える」ということが大事だということになる。本書に登場する方々は、「引き出す」ことをハイレベルで実践していることが分かる。

岡崎慎司選手の実母である岡崎富美代さんは、自らも自分のことを120%やりきるという姿勢が自然と子どもたちに伝わり、全力でがんばるということが育まれたという。

福岡大学サッカー部の乾眞寛監督は、短所には目をつむり長所を積極的に褒めることで選手の才能をつぶすことなく引き出し、永井謙佑選手の成長に寄与した。

Jリーグテクニカルダイレクターの上野山信行氏は「ティーチングではなくコーチング」と語り、言葉の定義や使い方まで気をつけた上で「引き出す」ことに注力している。

それぞれ細かな手段は異なるが、大局的に見て選手の内発的な動機づけを促すことが根底にある「指導・育成論」と見て間違いない。

小澤氏も本書におけるインタビューを通じて以下のように語り、主体的な行動や判断が何よりも重要という意見を持っているようである。

サッカーというスポーツにおいて選手に求められることが「自ら」考え、判断して行動し、結果責任を引き受けることである以上、どんなに小さな積み重ねであっても自らの考えや信念に基いてサッカーと向き合うことのできる選手は、小さな成功体験を積み上げながら手応えと自信を手にする。そして、それが次なるステージに選手を押し上げていく。(P.89から引用)

こういうことを考えている指導者が増えればいいのに、と心底思う。

良書であり、小澤氏に期待しているからこそ僕が思うこと

豊富なインタビューと事例により、本書に登場する7名が「育成」に成功したことはよく読み取れる。ではその7名から読者は何を学び取るべきか。

小澤氏は釘を差すように「はじめに」および「おわりに」にて以下のように語っている。

「子供を日本代表にするメソッドが知りたい、ノウハウを教えてほしい」 こういう考え方で本書を手に取った方には大変申し訳ないのだが、ここには『日本代表の育て方』に関する《正解》は一切記述されていない。(P.4から引用)
日本代表の育て方などないことを理解した上で、自分なりの育成・指導法を模索していくことが、日本代表を育てるための第一歩なのだ。その意味で、本書のタイトルには極めて逆説的なメッセージを込めたつもりでいる。(P.228から引用)

これは当然だろう。「正解」がない世界において絶対的に正しい方法などない。

一方で小澤氏は「普遍性」(P.10、P.24、P.44、P.169、P.190)、「普遍化」(P.4)、「普遍的」(P.137)という言葉を好んで使っているように思える。普遍であるということは、それはメソドロジー(方法論)でありメソッド(方法)ではない。メソドロジーは万人に共通して適用できるからこそ価値があり、それは育成とて例外ではない。例えば先の話で、才能や長所の引き出し方は人それぞれで正解がない(メソッドは様々ある)が、「引き出す」ということ自体(メソドロジー)は正しいと言えるだろうし、小澤氏もそのように感じているフシがある。

人材育成の世界は「おらが育成論」があまりにまかり通り過ぎている世界である。育成はどの世界にも存在し、自分も被育成体験を持っているため、自分の経験に照らしあわせて「こういうタイプは化けるんだ」というような認識のもとに勝手な指導・育成が行われる。それで育たなかった人のことは記憶の彼方に消し去り、成功したケースだけが記憶に残るのでますます「おらが育成論」が独り歩きする、という構図である。

これで本当にいいのだろうか。うまく育成された人は良いだろうが、その影でその何十倍も「育成されなかった」人がいるのではないだろうか。

もちろん、「育成してほしい」というのは本人の甘えで、本書でも語られている通り結局は本人が自主性をもって取り組まなければ成長が起こるはずもない。

しかし、幼年期や少年期、新入社員など、多くの人が「育成される」時期があり、そこで論拠のない育成論をあてがわれた人はたまったものでない。

手段や方法に絶対はないが、ベースのところでは適用して間違いのないメソドロジー、もしくは体系化された育成が存在するというのが僕の考えである。

例えば、「引き出し方」については、大きく分けてポジティブアプローチ(簡単に言えば、長所を伸ばす、内発的動機づけに期待する、など)とギャップアプローチ(簡単に言えば、足りないところを指摘する、課題を見つけるのを手伝う、など)が存在している、という体系化でも良い。ケースだけの留めず、抽象化することが肝要である。

メソドロジーは小澤氏の言うとおりケースから普遍性を抽出して紡ぎ出していくものなのであるが、僕も含めて大抵の人は残念ながらこの作業が得意でない。背景や環境、当人の適性などを考えずにケースから見える氷山の一角の出来事をマネして適用するのである。マネしやすいからケースが喜ばれるのであって、ケースは普遍性を抽出する宝だから喜ばれるわけではない。

なので、育成論を振りかざす場合は、ケースだけでなく、小澤氏の言葉を借りればケースを「普遍化」した結果を体系的に示すべきだと僕は思っている。

育成にも科学が存在する、それを語れる人は積極的に語るべき

小澤氏はサッカーにおける育成論は人材においても適用できると考えており、デットマール・クラマー氏へ以下の様な質問も投げかけている。

選手育成の方法を、企業や経済界における人材育成に転用することは可能だと思われますか?もしそうでしたら、どのような形で転用が可能でしょうか?(P.208から引用)

育成にも科学が存在する。小澤氏は当然それに気づいた上であえて語らずに読者に考えることを促しているであろうが、僕としては科学性に言及した上でメソッドについてはケースから学んでください、という構成の方がすっと腹落ちする。

前述したように多くの人はケースのマネをしてしまう。それで失敗を重ねながら自分なりの育成論・指導論を積み上げていくという考えもあるが、ではその犠牲になった被育成者はどうなるのか。サッカーの試合ならば失敗してもやり直せるが、長い目で見た育成において「失敗」などと軽々しく言っていいものでは思う。だからこそ、科学を語れる人がしっかりと科学を語り、その上でケースを参考にしてください、というのが「育成」を語る人の役割ではないかと、偉そうなことを思うのである。小澤氏に期待をしているからこその、ひとつの意見。



tags サッカー日本代表の育て方, メソドロジー, 小澤一郎


移籍ビジネスの現状を知るための最高の教科書。

0円移籍という言葉がメディアに登場するようになって久しい。0円という響きがマキャベリズムを感じさせることもあり、0円移籍は善か悪かという対立的構図で表面的に扱われていることも少なくない。本質的な議論をするためには、そもそも0円移籍とは何なのかを知らなければお互い上滑りとなってしまう。

0円移籍の是非について論じる土俵に立つために、基本的なルールからケーススタディまでひと通りの知識がインプットできるのが本書である。特筆すべきは精力的な取材で、「岡崎問題」の当事者である清水エスパルスの会長の早川氏、長友の移籍を成功させたFC東京の強化部長立石氏、日本人初の欧州GMとなった祖母井氏をはじめとする関係各所に自らの脚でインタビューを実施している。そのため、事実関係に加えて当事者しか知り得ない想いや哲学も垣間見ることができ、移籍ビジネスの根の深さを感じ取ることができる。

著者はどちらかといえばFIFAルール適応派

著者本人はFIFAルール(契約満了選手は移籍金0円で移籍できる)への「適応」を推奨している立場だと本書を通じて読み取れる。自らのスタンスを以下のようにあとがきに記している。

欧州や南米の移籍事例で見えるサッカー選手を物や土地のように「売り飛ばす」感覚までも模倣する必要はない。微妙なニュアンスかもしれないが、選手を商品として見る、扱う姿勢はこれからのJクラブに必要だが、日本的なウェットな情の部分も大切なことであり、それを日本独自のオリジナリティに高めていけばいい。その意味でタイトルに「売り方」とは書いているが、行きつくところ、FC東京と長友佑都との関係にあった「向き合い方」が何より大切なテーマではないかと思う。(P.268から引用)

FIFAルールはリーグ、チーム、選手、代理人らステークホルダーにとって必ずしも良いルールではない(*)。しかし、現状それがルールである以上、それに背くようなルールを独自で適用する場合は完全鎖国リーグとして運営する以外にはあり得ない。もちろん国内リーグの隆盛を考えて経営的なルールや移籍についてある程度の「ゆらぎ」を含む余地はあってしかるべきだが、FIFAルールに「国内移籍では」「海外移籍では」といった枕詞は存在しないため、ルールの二重適用はいずれ破綻を招く。グローバル化されている市場において独自ルールを残すことは既得権益をますます蔓延させ、そして長期的な国際競争力を阻害することにつながる。

(*)FIFAルールでは裕福なクラブがますます強くなっていくため批判を受けていたが、UEFAではファインシャル・フェアプレーの導入によって移籍ルールを変更せずに金満クラブ有利との批判を回避しようとしている。
参考)ファインシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後

ではJクラブはどのような道を模索すべきか

つまるところ、今後Jリーグのクラブが長期的に生き残っていく道は「育成」「地域密着」「チーム理念(哲学)とのエンゲージメント」の3点しかないと思っている。

本人が移籍を希望する場合、基本的にそれを阻害することはできないはずである。それがリーグの隆盛に関わるという大局的な問題は選手個人が抱えるレベルの話ではない。であれば、リーグやクラブとしてできることは育成を促進することである。次なるスターを生み出す環境的な支援。現状のJリーグの新人契約の年俸上限はグローバルに捉えれば明らかに自国リーグでの育成を支援しているとは言えない。いずれルールの変更が必要になるだろう。クラブとしても下部組織を充実させてチームに愛着のある選手を育てることは強化以外の観点でも重要であろう。

強化は常に目指すべきだが、常勝軍団を作り上げることは実質的には難しい。スポーツは盛者必衰の世界である。では仮に相対的に弱体化したときでもクラブを成り立たせる要素は何か。それは、チーム事業としての理念の実現である。
多くのクラブは地域密着を理念として掲げており、地域に根ざしていればJ2に落ちようが勝てない時期が続こうが、サポーターは見捨てたりしない。地域密着については『僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ 』が詳しい。

エンゲージメントは人材開発や組織開発においてもトレンドなのでこれからサッカー界でも重要視されるキーワードである。 サッカー選手も労働者である以上、働きたい場所の選択は本来自由のはずである。それをルールで阻止するのは間違っており、チームに留めたいのであれば違う方法を考えるしかない。このやり方には「交換」と「統合」の2種類しかないことが経営学的な通説となっている。「交換」とはチームへの忠誠(エンゲージメント)を金銭や福利厚生など何らかの報酬と交換する方法であり、「統合」とはチームとしての理念や方向性、哲学を労働者(選手)と文字通り統合し、ベクトルをあわせることで金銭を超えたエンゲージメントを共有する方法である。

「統合」というやり方はキレイ事と揶揄されることもしばしばあり、またサッカーの世界においても「選手寿命が短いサッカー選手は金銭を優先して当たり前」「金銭こそが選手を評価する唯一の指標」との主張が聞かれる。その意見を完全に否定するわけではないが、結局のところ優秀な選手に「チームに残りたい」もしくは「移籍するにしても移籍金を残したい」と感じさせるためには「統合」の観点を戦略的に醸成するしかない。上述の著者の引用の中の「向き合い方」というのは「統合」の観点に他ならないのである。


また、本書の中では「向き合い方」の改善以外にも代理人、契約期間、アジア展開などのより良いクラブ経営への案を多数示している。現状の問題提起だけではなく解決策を示しているという点で著者の誠実なジャーナリズムが詰まった良書である。



tags 0円移籍, エンゲージメント, サッカー選手の正しい売り方, 小澤一郎

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プロフィール

profile_yohei22 yohei22です。背番号22番が好きです。日本代表でいえば中澤佑二から吉田麻也の系譜。僕自身も学生時代はCBでした。 サッカーやフットサルをプレーする傍ら、ゆるく現地観戦も。W杯はフランスから連続現地観戦。アーセナルファン。
サッカー書籍の紹介やコラム、海外現地観戦情報をお届けします。

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