この本が世にでること自体が重要、とのことだが。

cakesの連載「フットボールインテリジェンスの磨き方」(冒頭のみ無料、記事全文は有料)にて著者の中西哲生氏は本書の意義について対談で次のように語っている。

この本が出ること自体がポイントです。この題名の本が書店に並ぶ、ということが重要なんです。
(中略)
『日本代表がW杯で優勝する日』というのを目にして、みんなが「あ、いつか優勝する日が来るんだ!」と意識してくれたらいいなと思ってます。よく、紙に目標を書いて貼っておくといいって言うじゃないですか。

確かに集団的無意識としてW杯のベスト8で満足しないということは、2002年のベスト16での敗北を顧みても重要であることのように思える。

しかしそうであるならば、なおのこと中西哲生氏には描き下ろしでそのストーリーを描いてほしかった。

読んでいてハテナがつき続け、あとがきで氷解する

中西哲生氏はテレビでのコメントを聞いていても、川崎フロンターレに在籍した現役時代にJ2からJ1に昇格したノンフィクションを描いた『魂の叫び―J2聖戦記』を読んでも、心は熱く、思考は冷静且つ論理的に考える人物であると思っている。

本書の目次は以下のとおりで、一見したところでは読み進めるとW杯優勝への道筋が徐々に見えてくる構成のように感じられる。

  1. W杯優勝は、無謀な夢ではない
  2. 日本代表が秘めた知られざる強み
  3. フットボール・インテリジェンスを持て
  4. W杯優勝のための真の課題
  5. W杯優勝挑戦元年としての2014年

しかし内容はそのように作られていない。決して論理的とはいえない構成であるし、内容も重複しているものが多い。そして何より「〜〜だからW杯で優勝できる」というストーリーが感じられないのである。

中西氏らしくないと思いながら読み進め、あとがきでついに腹落ちした。

本書は2011年8月から、朝日新聞デジタル版で50回以上にわたって連載してきたコラム「SPORTS 日本ヂカラ」をもとに加筆・修正したものです。(P.212から引用)

そう、何を隠そうコラム集だったのである。

そう言われれば、コラム程度の長さに全ての節がまとめられている。コラムであれば、内容が重複することがあるのもうなずける。いくら加筆・修正したといっても、もとがコラムであれば内容をつなげてW杯優勝に導くのは無理という話である。なぜなら、W杯優勝というストーリーを描くために必要なのは「連載」であり、「コラム」ではその1回だけを読んだ人でも内容が分かるように書かなくてはならないのでストーリー性を持たせられないからである。

少し残念である。どうせなら、中西氏なりのストーリーで書き下ろしたものを作り上げ「W杯優勝」というストーリーを作ってほしかった。編集の意向なのかもしれないが、これでは片手落ちである。

コラムだと思って読めば、非常によくまとまっている

コラムで分かるのは、執筆者の考え方のバックボーンであったり流派であったり、表現としてのおもしろさであったり視点の提供であったり、そんなところだと思っている。

そういった視点で読めば、今度はおもしろく思えるから不思議だ。もともと筆力もあるし考えも視点も視聴者目線で提供するのも得意なので当たり前といえば当たり前。

中村俊輔、遠藤保仁という日本が誇る至高のゲームメイカーとの対談がそれぞれ収録されており、これも読み応えがある。



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