御託はいいから一度呼んでよ、というのが本音ではあるのですが。

国内組で臨むことが明言されていた東アジア選手権の代表メンバーが本日(2013年7月15日)発表された。豊田、工藤、大迫、おおいに結構である。今後の日本代表を背負って立つ可能性を秘めた選手たち。活躍を期待したい。

しかし、しかしである。ああ、佐藤寿人。ついぞ、このタイミングでも招集されず。Jリーグで活躍しつつ、普段から代表に呼ばれていないメンバーで今回の東アジア選手権に呼ばれなかったということは、今後ザッケローニに招集されることはないと言ってよいだろう。代表としての活躍は絶たれたといって過言ではない。ああ、半ば予想していたこととはいえ、なんたることか。日本という国はついぞこの稀代のストライカーを活かすことができなかった。

とはいえ、僕はザッケローニの考えもある程度分かっているつもり。佐藤寿人を呼んでほしいというのは、冷静に考えれば矛盾しているし、単なるわがままに過ぎない。なぜザッケローニは佐藤寿人を呼ばないのか。それを整理しておきたいと思う。

怒られるかもしれないし自分で書いていて歯がゆいが、端的に言って呼ばれない要因は身長。もう少し言えば、身長からくる攻撃のプレースタイルの不一致、セットプレー守備時のデメリットの2点である。

身長からもたらされる非優位性 攻撃編

佐藤寿人のサッカー人生は、170センチというストライカーとしては決して大きくない身長との戦いの連続である。『小さくても、勝てる。』(筆者のレビューはこちら)という著書のタイトルにもその決意が表れている。

著書の中に、このような記述がある。

何度も繰り返しているが、僕は身長が低い。
ズラタン・イブラヒモビッチのように中央でどっしりと構え、味方のクロスを待っていても、身長170センチの自分が普通に競り合えば、間違いなく弾き返されてしまう。それだけに僕の場合はペナルティボックスの中でいかにスペースを作り出し、いかにシュートコースを開け、いかにシュート体勢に入るかが重要になってくる。(P.91から引用)

ここで重要なのは、佐藤寿人はやはり生粋のストライカーであり、最後は自分が決めるというイメージを重視しているということである。自分が決めるために、小さくてもできることは・・という順番が伺えるし、本書の中でもエゴイストであれと自ら謳っている。

一方でザッケローニは、必ずしも1トップの選手にフィニッシャーとしての期待をしていない。もちろん、かつてのビアホフのようにサイドアタックからドカンを想定はしているだろうが、日本人にそこまで期待できないことも理解しているだろう。1トップの選手はあくまで「崩しの一員」であり、中央に構えるため必然的に体格で相手を押さえつけられるようなフィジカルが重視されることとなる。そして香川や岡崎をFWとして登録しているように、彼らこそが実はフィニッシュを期待されている要員とも言える。

崩しを考えたときに、どうしても1トップにはポストプレーが期待されるような戦い方をしており、それは佐藤寿人のプレースタイルとはマッチしないと、そういうことなのだと思う。

身長からもたらされる非優位性 守備編

サッカーキングに掲載されている岡田康宏氏のコラムザックジャパンの新戦力に求められる「高さ」が分かりやすいが、特にセットプレーの守備時に日本は高さが足りないのである。高さという目をつむっても起用したいと思わせるくらいのメンバーが既に存在し、それは長友、香川、遠藤である。そもそも香川はセットプレー時には守備に入らず、1人だけ前線にポジショニングをしている。それだけで相手はカウンターを警戒しなければならないので、十分に「守備」としての機能は果たしているかもしれないが。長友、遠藤もすでに日本には欠かせない主力である。となると、残りのメンバーには必然的に高さが求められ、それは内田篤人ですら例外でなく、酒井宏樹をちょくちょく使っているのは高さという理由があるからに他ならない。ましてや、本田が不在という事態になればさらなる高さ不足は深刻で、1トップ人材がセットプレー守備時に果たす役割がバカにできないのである。

先日のコンフェデ準決勝のスペイン対イタリア戦において、スペインは攻撃時に必ずしも機能しているとは言いがたかったフェルナンド・トーレスをずっと交代させずに使い続け、延長に入っていよいよ交代というときに代わりに入ったのがなんとボランチのハビ・マルティネスでド肝を抜かれたことがある。しかもハビ・マルティネスはそのまま1トップに入ったのである。ビジャがまだベンチに控えていたのに、である。

この意図について試合後、デルボスケ監督はこのように語っていた。

「ハビ・マルティネスの寛大さと献身さは際立っていた。我々はフィジカルの強い選手を必要としていた。また、高さで負ける訳にはいかなかった。彼はチームに新鮮な活力を与えてくれた」
「我々は空中戦で苦しみ続けていたので、あれ以上高さで負ける訳にはいかなかった。それゆえ、ゴールゲッターよりもフィジカルの強い選手を必要としていた。そういった意味で、自陣のペナルティエリアから敵陣のペナルティエリアまで、あらゆるポジションで強さを見せられるハビ・マルティネスは、あの場面で最適な選手だと考えた。事実、彼はチームに新鮮な活力を与えてくれた」(スペイン代表指揮官、イタリア戦でサプライズ起用 | サッカーキングより引用)

スペインでさえ、ここまでセットプレーの守備には気を揉んでいる。それくらい大事な要素ということだ。

また、アンチェロッティは『欧州サッカー批評(5)』のインタビュー(PSG監督就任時)において、バルサ対策を以下のように語っている。(現在は【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(前編) | フットボールチャンネルでも読むことができる)

いずれにせよ、今のバルサと対峙するには彼らが備えていない部分で勝負すべきだ。それは"kg"と"cm"。つまりはパワーと高さ。ここにより多くの比重を割いた戦い方を実践しなければならない。(P.5より引用)

これはバルサ対策ということなので普遍化できる話ではないが、やはりバルサのティキタカに全世界が傾いた時代から少しずつフィジカル重視の時代に揺り戻しが発生しているてことは確かである。実際、バルサはバイエルンの高さ(だけではないけれど)の前になすすべなく敗れさっている。

このような状況で、果たしてザッケローニが170センチの佐藤寿人を1トップで起用するかといえば、難しいと言わざるを得ない。事実、東アジア選手権に呼ばれた1トップ候補の選手たちは豊田陽平185センチ、大迫勇也182センチ、工藤壮人177センチである。工藤の身長は決して高くはないが、佐藤寿人170センチに比べればずいぶん高いし、フィジカルも弱い選手ではない。身長が低くても1トップに入るためには、長友や香川くらいの優位性を代表にもたらさないと難しいということである。

しかしそれではなんとも切ないではないか・・

身長の低さゆえに身につけたプレースタイルでJリーグで得点を量産しても、代表には身長ゆえに選ばれることがない。この如何ともし難い状況、どうにかならんのか・・。Jリーグで10年連続2ケタ得点、ハンパなストライカーでは成し得ないでしょう。

佐藤寿人は自著の中でも、このように記している。

現役選手である以上、日本代表は目指していく。(P.170から引用)

どうにか、佐藤寿人に一度チャンスを与えてあげたい。矛盾しているしワガママだけど、誰かどうにかして一度で良いからこの不屈のストライカーにチャンスを与えてあげることができないのだろうか。



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