2013年11月の記事一覧


レッズ一筋、山田暢久20年のメモワール。

94年にレッズに入団し、それ以来レッズ一筋で20年。先日、J1通算500試合出場を達成。J1通算500試合は伊東輝悦、楢崎正剛に続き史上3人目の快挙。中でも山田暢久は1つのクラブでの500試合であり、これはJリーグ初の記録となっている。

また、少し前のデータだが、世界のプレイヤーの同一クラブ在籍期間ランキング(英語)で山田暢久は7位にランクインされている。上にいるのはギグスやトッティといった名プレイヤー。山田暢久の偉業がいかにすごいかが分かる。

そんな山田暢久の20年間を一冊にまとめたメモリアルブックが本書である。ファンならずとも、Jリーグを追いかけてきた人なら懐かしい思い出がよみがえってくることは間違いない。

馴染み深い監督や選手の思い出とともに20年を振り返る

福田正博、原博実、横山謙三、ブッフバルト、岡野雅行などレッズで山田暢久と関わりのあった監督・選手のインタビューを織り交ぜながら、1994年から2013年まで1年ずつ山田暢久のJリーグにおける奮闘を綴っている。

興味深いのは、誰もが山田暢久に同じ印象を抱いているということ。

 ― 能力はあるのに一生懸命やらない(ように見える)から、もったいない、と。

山田暢久がレッズに入団した94年に監督であった横山謙三はこう語っている。

あの当時から強さ、速さ、持久力が図抜けていて、サッカーに必要なすべての条件を備えた、極めて珍しい選手だった。
(中略)
自分をさらけ出してがむしゃらにやるタイプではないから、監督によっては「一生懸命やってないな」といった印象を持たれたかもしれない。(P.18から引用)

これは小野伸二の証言。

強い相手になればなるほど、とんでもない力を発揮するんです。それが本当の実力なんでしょうけど。一方で、相手によっては適当になる(笑)。(P.61から引用)

そしてこれは山岸範宏。

ヤマさんがすごいのは、他の選手が100パーセントでやっているプレーを80パーセントぐらいの力でやれてしまうところです。プレーの余裕は、そこからきていると思います。それをチンタラやっていると受け取る人もいるかもしれないけど、僕はそうは思わない。落ち着いているから視野を確保できるし、ゲームの流れを読むこともできるんです。(P.120から引用)

いわば、変人。「たるそうに」やっているからタリーさんと一部から呼ばれたりもしている。ネットでは山田暢久の伝説50選なんてものもまとめられており、なるほど確かに伝説の選手。

マツコ&有吉の怒り新党の新3大○○調査会で「山田暢久の気の毒なイエローカード」が特集されたこともあり、何か持っている選手でもある。これは僕も番組を見たが、確かに気の毒。ちなみに山田暢久は通算イエローカード数でもJリーグ記録を持っている。

来期はどうする、山田暢久

そんな山田暢久だが、今シーズン限りでの戦力外の通告を受けた。クラブ側はスタッフとして慰留しているが、現時点で今後については未定とのこと。

本書を読むと、岡野雅行が現役でいる限りは現役を続けるのではないかという気もする。岡野雅行もこう語っている。

時々、電話をかけてきて「まだやってるの?」と聞いてくるけど、お前だって、やってるじゃん(笑)。年上だから、先に引退してほしいのかもしれないけど、そうはいかないよ!ここまで来たら、体が壊れるまで、つぶれるまでやらないと。2人とも、もう一花咲かせて、いい終わり方ができればいいよね!(P.69から引用)

レッズでの挑戦はいったん終わるかもしれないけれど、まだプレーできるし個人的には現役を続けてほしいと思っている。レッズで、という想いはあったのかもしれないけど、20年も同一クラブでプレーできたことが奇跡。クラブは変わっても愛されることは間違いない。本書の帯にもなっているこの言葉は、レッズというクラブに重きを置いたものなのか、レッズでなくとも現役であり続けることに重きを置いたものなのか。今後を見守りたい。

1試合でも多く、1年でも長く、自分とレッズを応援してくれる人々のために現役であり続けたい。(P.13から引用)

がんばれ山田暢久!



tags 500試合, 一途, 同一クラブ在籍期間, 山田暢久, 岡野雅行, 浦和レッズ


20年の歴史に幕。

サッカー批評ISSUE64「サッカーメディアを疑え」の企画「サッカーメディア編集長座談会」にてエル・ゴラッソ元編集長の川端暁彦氏が次のように語った矢先の出来事だった。

紙メディアやってるところは総じて撤退戦だと思うんですけど、どこまで撤退するのか、削られた領土の中でどうやって国を成立させるか、みたいなそういう戦いだと思う。(P.68から引用)

― 週刊サッカーマガジン廃刊

サッカーマガジンがなくなるわけではなく、月刊誌として生まれ変わるので廃刊は言い過ぎかもしれない。しかし、実態は編集長から編集スタッフまで総取っ替えとのことらしいので、ベースボール・マガジン社としてはひとつのパラダイムを終える意気込みなのだと感じる。

紙メディアの出版ペースと役割とは

冒頭に編集長の北条聡氏が「読者のみなさまへ」と題して次のように語っている。

現在の週刊誌へと刊行形態が変わったのは、ちょうどJリーグ元年にあたる、1993年の秋のことでした。日本サッカー界のアイコン(象徴)である、若き日のカズと井原正巳の2ショットが『週刊第1号』の表紙を飾っています。
(中略)
週末、全国各地で開催されるプロチームの熱戦を堪能し、日本代表の躍進に声をからす、新しいサッカーライフの確立が「週刊化」への引き金でした。Jリーグ開幕から、わずか半年後のことです。

 月刊では遅すぎる
 日刊では浅すぎる

(中略)

しかし、時代はめぐり、週刊誌の位置づけは、20年前とは大きく変わりました。

 週刊では遅すぎる
 週刊では浅すぎる (P.5から引用)

まさにこの言葉が全てを表している。

ネットの全盛期、速報性で紙メディアが勝てる余地はない。スピードという土俵では勝負できない。

ではコンテンツの質ではどうか。月刊誌が質の高いコンテンツを提供しているかどうかはさておき、週刊誌で毎週質の高い記事を送り続けることは至難の業である。玉石混交ではあるが、記事であればネットで無料で読むこともできる。

また、週刊誌の敵はネットの記事や月刊誌ではなく、むしろスマホで遊べるソーシャルサービスやゲームである。隙間の時間を埋めるために雑誌を買う必要が時代とともに逓減している。

要は、週刊誌ならではの武器がないのだ。

厳しいがこれが現実である。月刊誌とて、武器があるかと言えば怪しい。サッカー専門誌だけでなく、雑誌メディアそのものが同じ難局にさらされている。

月刊サッカーマガジンは勝負できるのか

月刊誌としてのタイトルは「サッカーマガジンZONE」というらしい。特別編集長として宮本恒靖氏を迎え、記念すべき初号はその宮本氏が表紙を飾る予定とのこと。

月刊らしく特集テーマを2つ組んで、マッチレポートなどはなさそう(あっても取り扱いは限りなく小さそう)な雰囲気である。

予定される特集テーマも発表されている。

■特集Ⅰ 世界一流のマネージメント
「ウチダを売り出せ!」シャルケの日本向けPR
ドイツNo.1ドルトムントのブランドイメージ戦略
アーセナルのスタジアムビジネス
ファーガソン流のリスクマネージメント
一流のチーム分析術

■特集Ⅱ アウトローの系譜
マラドーナ、イブラヒモビッチ・・  (P.32より引用)

既存の月刊誌とどうやって差別化していくのか、コンテンツを見る限りは厳しそうな匂いがぷんぷんする。とりあえず初号は買ってみようと思う。11月22日発売で、以降は毎月24日発売とのこと。

変わらない武智氏の姿に感銘を受け、紙面を閉じる

武智幸徳氏のコラム「ピッチのそら耳」も558回目の今号で最終回。その他の連載が「最終回なので」「週刊サッカーマガジンとして最後なので」という別れの言葉をそれぞれのコラムに綴る中、武智氏は「来週も書くよ」といういつもと変わらぬコラムでそっと幕を閉じた。連載は終わるが、ピッチで行われるサッカーという至福は明日もこれからも続くよ、そこから聞こえる交響曲に明日も耳を傾けるよ、というメッセージが詰まっているように思えてならない。

このコラムが終わるのは寂しい。厳選された79回のコラムを書籍化した『ピッチのそら耳―サッカー的探求術』(筆者のレビューはこちら)は500回を数えた記念として発売された。個人的には、連載終了を記念して「そら耳その2」の出版を期待したいところである。



tags サッカーマガジン, ピッチのそら耳, 北条聡

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プロフィール

profile_yohei22 yohei22です。背番号22番が好きです。日本代表でいえば中澤佑二から吉田麻也の系譜。僕自身も学生時代はCBでした。 サッカーやフットサルをプレーする傍ら、ゆるく現地観戦も。W杯はフランスから連続現地観戦。アーセナルファン。
サッカー書籍の紹介やコラム、海外現地観戦情報をお届けします。

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