バルセロナ初心者のための、バルセロナを薄く広く把握するのに適した書籍。
本書は、現役選手やジャーナリストら11人の識者にバルセロナについて語ってもらい、様々な視点からバルセロナという稀代のクラブを解き明かそうというものである。
極めるための本ではなく、入門書
しかし結論から言ってしまえば、内容は決して濃いものではなくタイトルにあるような「極める」という領域には決して本書だけで到達することはできない。逆に言えば、とても平易に分かりやすく書かれているので初学者が入門書として扱うには最適である。
バルセロナについて概要を知るためにはプレーモデルやカンテラの存在、受け継がれてきた歴史などを簡単にでも知る必要があるが、それらは本書にひと通り網羅されている。
さらにバルセロナを極めたいなら
さらにバルセロナを理解するために手っ取り早いのは、自然科学を理解することである。
例えばクライフはバルセロナのサッカーを「ボールが的確に選手間を動き続け、選手たちは頻繁にポジションを移すが、チームとしてのバランスは常に保たれる」と表現した。この真意を捉えたいのであれば、自己組織化や動的平衡といった自然科学的な概念を理解すれば事足りる。
自然科学的なアプローチからバルセロナを理解するためには『バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー』(筆者のレビューはこちら)を読むとよい。これまで読んだサッカー本の中では1,2位を争う良書だと僕は思っている。
また、バルセロナの特長としてネガトラ(ネガティブ・トランジション)の速さがある。バルセロナはボールを奪われた直後の守備への切り替えの速さが異常で、すぐにボールを取り返してポゼッションを始める。これはそもそも自己組織化しているからこそできるものなのだが、トランジションについての理解は拙ブログのサッカーゲームにはハブがあるに詳しく書いた。この概念も同様に自然科学の相転移という現象がキーワードになる。
バルセロナ本もそろそろ打ち止めか
雑誌も含めバルセロナ本にはいくつか目を通したが、そろそろ打ち止め感が出てきている。論者はいつも同じだし、書いてあることも大体同じ。たぶん編集者から「分かりやすく書いて」「新しいこと書いて」とかいろいろ言われているだろうが、真意が変わることはないので結局結論は同じになる。
リーガを圧倒的な強さで優勝したのに、CLベスト4でバイエルンにボコられたおかげでバルセロナ時代の終焉とか言われていてちょっと言い過ぎだと思うが、世間の興味の移り変わりのタイミング的にもちょうどよかったのかもしれない。バルセロナ本の代わりにバイエルン本がいくつか今後出版されそうな気がする。
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