欧州で活躍する日本人サイドバックについて概観を理解する初学者向け新書。
日本人サイドバックの欧州での活躍が目覚ましい。長友佑都、内田篤人、酒井宏樹、酒井高徳。ザックJAPANのサイドバック枠は欧州組で独占されている。彼らがなぜ欧州で活躍できているのか、複数の視点から紹介しているのが本書である。
ただし、サイドバックを活用した攻撃の構築や戦術などの深堀りは少なく、図の使用もない。動き方についてはステレオタイプな指摘にとどまっており、あくまで広く浅く知りたい人向けと考えたほうが良い。
本書の最大のポイントは徳永悠平のインタビュー
記憶に新しい東アジア杯2013。攻撃陣で評価を高めたのが柿谷曜一朗や豊田陽平であるならば、守備陣で評価を高めたのが徳永悠平だろう。
特に韓国戦での活躍は眼を見張るものが合った。槙野に代わって途中出場するやいなや守備の安定をもたらし、「守備的に戦いたいときのオプション」として一気に代表メンバー戦線に名乗りを上げた感もある。23名という限定された枠を考えればサイドバック専門家を4人も呼ぶ必要性は低く、先に挙げた欧州組4人に割り込む余地はあると考えられる。
本書ではそんな徳永について、「ロンドン五輪選手が語る日本人サイドバックの"いま"」としてインタビューを試みている。もちろん、東アジア杯が開催される前の話である。その他の章がドイツ人の代理人トーマス・クロート氏や、日本人プロ第一号としてドイツでサイドバックとして活躍した奥寺康彦氏へのインタビューで構成されていることから考えると、徳永へのインタビューも「日本代表のサイドバックを語る第三の視点」を意図していた可能性が高い。それが仮に日本代表に定着することとなると、本書のインタビューが貴重なものになり、脚光が集まることになるかもしれない。
徳永はもともと能力の高さは折り紙つきであったが、何の因果か代表に定着することはなかった。しかしロンドン五輪のオーバーエイジ枠での安定した活躍が示すように、高い守備力と惜しみない運動量による攻撃参加は十分世界に通用するものである。本書にも以下の記述がある。
関塚監督は徳永の選出理由として「最終ラインの建て直しを図ることができる人材」と語っていたが、徳永がいたからこそベスト4にまで上り詰められたと言っても過言ではない。(P.90から引用)
センターバックもこなすことができる徳永はブラジル行きの可能性もおおいにあり得ると個人的には思っている。国内からサイドバック枠に名乗りをあげれば、それはまた日本がサイドバックの宝庫として世界に質を証明することにつながり、うれしいことである。
tags なぜ日本人サイドバックが欧州で重宝されるのか, 内田篤人, 徳永悠平, 長友佑都
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